この世界は美しい。

色鮮やかでキラキラしている。

とても綺麗な御伽の世界。

今日もその世界へと旅立つ。

嗚呼、早く会いたい!



「ダイヤちゃ〜ん!!!」


盛大に扉を開けて部屋の中に飛び込む。
目に映ったのはお目当ての彼女ではなく猫と白兎の彼らだった。


「アイツなら今いねーぞ」

「お久しぶりですねアリス」

「あらチェシャくんにビットくんじゃない」

「おまっそんな顔で見るんじゃねーよ」


げんなりとした口調で部屋に飛び込んできた少女アリスにチェシャは咎める。

アリスは今もがっかりした顔をしている。
余程この家の住人のダイヤに会いたかったのだろう。

そんなアリスに慣れた様にビットは状況を説明した。


「ダイヤなら今ロウ達と一緒にお茶と茶菓子を買いに街に出てしまいましたよ。で、僕らは留守番中です」

「そうなの?ああん入れ違いになっちゃったわ!」


ショックで膝から崩れ落ちたアリスにビットは見慣れた様にたしなめる。


「床に座ってはいけませんよ。座るならちゃんとイスに座ってください」

「…わかったわ」

「ビットお前アリスの扱いに長けてきたな」

「伊達に振り回されてませんからね」


遠い目をして悟るビット。

ビットはアリスが色の国に来た当初この国の知識等を彼女に教えていたなと、チェシャは思い出した。

人一倍アリスに振り回されているのだ。


「そういえばアリス」

「なに?」

「今回はどのくらいこちらに滞在予定なのですか?」

「暫く居たいのはやまやまなんだけど試験が近いから今回は長くはいないわ。勉強しなくちゃ」

「勉強してたんだな」

「チェシャくん?」


意外そうに呟いたチェシャにアリスはバッと振り向くが同時にチェシャも違う方向に向いて視線を反らした。

二人のやり取りを見ながらビットはやれやれと肩をすくめた。

…ビットも意外と思ったのは内緒である。


「早くダイヤちゃん帰ってこないかな。早く抱きつきたい頬擦りしたい…!あ、でもメアリーさんも会いたいわ。キャンディちゃんにサラちゃんにエミリアさまにクロッカさん…ウフフフ」

「「………」」


顔を真っ赤にしてよだれが垂れつつ笑うアリスに二人はこれから帰ってくるであろうダイヤと女子メンバーの身を案じた。

…トランプ兵団に通報しておいた方がいいだろうか?

そんなこんな思い悩んでいると数人の足音が近づいてきて扉が開かれる。


「ただいまーってアリス!久しぶりだ、」

「お帰りなさいダイヤちゃん!!」


コンマ数秒でアリスはダイヤに抱きつく。
勢いに耐えきれず二人はそのままその場へと倒れたのは言うまでもない。


「あだーっ?!」

「きゃっゴメンねゴメンね!?!」

「ダイヤに何すんだアリスゥウウウ!!」


倒れた衝撃の痛みに唸るダイヤにアリスは抱きついたまま慌てふためくと目の色を変えたロウが突っ掛かる。

ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた三人を他のメンバーは横目で見ていた。


「あーあ始まったぜ…不毛な争いが」

「ロウさんファイトっすー!レイシアちゃん頑張っすー!」

「ってお前どっちの味方なんだよリエヴル!」

「チェシャうるさいのーわたしも二人ともを応援するのー」

「キャンディひでぇ!」

「お帰りなさい。リエヴルさんとキャンディも一緒に来たのですね」

「ちょっとそこで会ったねん。んで連れて来たんはええんやけど、アリスも来とったんやな」

「ハイ。何だか一瞬にして騒がしくなりましたね」

「これはこれで退屈せんわ」

「まったくです」


ダイヤを取り合うロウとアリス。

二人を応援するリエヴルとキャンディにもうしらん、と言った顔のチェシャ。

それを眺めながらメアリーとビットは笑った。



でも、この日常が続くのはいつまで?


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