×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


友達の友達


 月島くんと普段から仲良しな山口くんは、月島くんと席の近い私にもロックオンしていたらしい。珍しく一人で、ちょこんと目の前に立っていた。
 改めてみると、山口くんも充分に大きい。普段は月島くんと並んでいるからそうでもない気がするんだけど。

「みょうじさん!英語得意でしょ?」
「え?」
「ごめん、こないだプリント見えちゃった!」
「ああ、うん。嫌いじゃないよ」
「本当?次の小テストってどこが出るの?」

 少し緊張して、声が上手く出なかった。そういえば私が一方的に彼を親しく感じているだけで、山口くんと喋るのは初めてだ。
 次の授業は英語の小テストがある。といっても復習みたいなものだから、一昨日習った部分を押さえておけば大丈夫。

「うーん、と。ココとココの文法と、この関係代名詞の使い方と……」

 私が説明している間、山口くんは熱心にメモを取っていく。いつも一緒の月島くんはどうしたんだろう。聞いてもいいのか気になる。

「なるほどー!ありがとう、みょうじさん」
「ううん。山口くん、英語苦手なんだ」
「うん。でも他がすげー得意って訳じゃないけどね!」

 カラカラとよく笑う顔に、そばかすがとても良く似合っていると思った。バレーが室内競技だからか、山口くんの肌はすごく白い。
 そういえば、月島くんも白いよね。

「羨ましいなぁ……」
「え?何が!?」
「うわ、ごめん!肌白くて綺麗だなーって思って」

 またやってしまった。考え過ぎて思っていたことが口から出ちゃっていたみたい。この変な癖は大人になるまでに直したい!

「……みょうじさんって変わってるね」
「そ、そんなことある、かな?」
「え。そこで俺に聞くの?」

 あははって声を出して山口くんが笑うから、優しさに助けられた気になる。やっぱり、私の想像していた通り、山口くんって明るくていい人だなぁ。



「何してんの、山口」
「うお!?ツッキー!帰ってきてたの?」
「さっきからいたんだけど」
「先生なんて?」
「別にたいしたことじゃない」

 何時の間にか私の席の後ろから、月島くんが登場して。さっきまで前の子の椅子を借りて座っていた山口くんが、すごい速さで立ち上がった。
 私は座ったまま二人を見上げる。ちょっと首が痛くなるくらいだ。

「何で山口がみょうじさんと仲良くなってる訳?」

 じろりと見下ろされた。月島くん、機嫌悪い。貴重なお昼休みに呼び出されるなんて、あんまり気分のいいものじゃないしね。

「勉強教えてもらってたんだよ!ね?」
「う、うん!全然たいしたことじゃないんだけど……」

 そう言ってさっきまで見ていた教科書のページを差し出した。そしたら教科書を握った月島くんによって、それはあっさり閉じられる。
 うん。まだご立腹の気がするのは何で?

「みょうじさんって優しいよなー!教え方も親切丁寧だし」
「そんな事ないよ。私も物理とか教えるのは無理で……」
「そうなの?賢そうなのに!」
「山口」
「何?ツッキー営業時間外って言ったじゃん」

 二人を交互に見ていると、腕組をした月島くんはじーっと見下ろしてくる。その顔が山口くんを見ないで、私を見ているということは。
 その眉間の皺の原因は私だということですか。

「あ!山口くんは宿題写させてとかじゃないし、範囲の確認だったから私も勉強になったし!」

 もしかして、前みたいに断りきれなかったと思われているとか?でも違うよ。
 そう伝えてみたものの、月島くんははっと息を吐き出した。

「そういうことじゃないんだけど」
「え?あ……月島くんも確認する?」
「ツッキーはきっと完璧だよ!」
「何で山口が偉そうにする訳?」
「ごめん、ツッキー!」

 この二人の関係は、本当にぶれないなぁ。山口くんって器がとんでもなく大きい人なのかもしれない。私も、月島くんは毒を吐くだけの人って訳ではないと分かってきたけどね。

「もうすぐ授業始まる。席に戻れば?」
「そうだね、ありがとうみょうじさん!」
「ううん!役に立ててよかったよ」

 そう言いつつ、月島くんは山口くんが席に戻るのを見ていたままで。腕組をしたまま一歩も動かない。何だろう、気まずい。

「全く。君って本当に危なっかしいね」
「えっと……?」
「自覚ないの、性質悪い」

 小さく呟かれた言葉は、悪口かと思えるのに何故か耳に張り付いて。月島くんが席に戻ったその後も、しばらく私を支配した。



***続***

20131105

[*prev] [next#]
[page select]
TOP