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閉じた世界で


 部活のない休日、なまえが家にやってくる。親に挨拶をして駆け上がってくる足音が、軽快で嬉しそうに聞こえるのはおれの勘違いじゃない、はず。
 ゲーム画面を閉じて座っていたベッドから立ち上がる。なまえがおれの部屋のドアをノックする前に開けたら、どんな反応するかな。

「研磨く……わ、わ、わ!」
「いらっしゃい」

 おれが内側から引いたものだから、ノブを回そうとした手が傾いてバランスを崩すなまえ。それを正面から受け止めると、ふんわりと香るいい匂い。

「吃驚、した……」
「タイミング悪かった、ごめん」

 なんて、嘘。でもそういうのを疑う様に出来ていないなまえは、自分が悪いと思ったのか頭をブンブン横に振った。
 腕の中から抜け出したいのか、見上げてくる顔には焦りが見える。それが面白くなくて、ぐっと引き寄せてドアを閉めた。

「……ん、」

 両手で挟み込むように顔を包んで、なまえの口を塞いだ。さっきからずっと開いたままだったし、丁度良いかと思って。
 いきなりのことに吃驚したのか、なまえの目は見開かれていて。それをじーっと見ているおれも、瞬きせずに見返した。

「ふ、ぅ……ぁ」

 声にならない声を漏らしながら、なまえはきつく目を閉じる。この顔たまんない。いつまで経っても恥ずかしそうにするから、見ておかなきゃって気になる。



 しばらくして開放してあげると、なまえは長い息を吐く。呼吸が整うと、改まったように背筋を正して、言うんだ。

「あ、あの!」
「何?」
「……そ、の……する、時ね?」
「ああ、キス?」
「!う、うん。あの、ね、目!」
「あー……」

 説明するの、面倒臭い。それがおれの本音だけど、そういう訳にもいかない。
 彼女はおそらく、答えを聞くまでじーっと止まっているだろう。きゅっとスカートを握りしめているのも可愛いかなぁ。
 分かりやすくて、本当。好き。

「開けてたら駄目なの?」
「何と言いますか!は、恥ずかしいよ」

 スカートが少し託しあがって、白い太腿が覗く。美味しそう。その足にもキスを落としたいなんて。おれが考えているなんて、思ってもみないんだろうな。

「だってなまえ、可愛いんだもん」
「え……っ!かわ……」
「必死なの、見てるのは好き」
「何、それー!何か研磨くんばっかり!余裕でズルイよ」

 今度は肩を窄ませて、子供みたいに駄々をこね出した。おれはなまえに背を向けながら、ベッドに腰を降ろしてゲームを起動させる。
 なまえ、全然分かってないなぁ。

「そんなことないよ」
「……え?」
「何でもない」

 キスをする時、目を瞑るのに必死でなまえは気付いていないのかもしれない。おれが頭と顔をこっちに向かせるフリをしながら、彼女の両耳を塞いでいることに。

「研磨くん?」
「ゲームするから、静かにしてて」
「う、うん」
「何ならおれの膝の上にいる?」
「……!い、いえ!ここにいます!」

 顔を真っ赤にさせたなまえが、ベッドと机の間に腰を降ろした。見上げてくる顔が真っ赤になっていて、ついからかってやりたくなる。

「遠慮しなくていいのにー」
「研磨くん!棒読みだよ?」

 いつになったら気付くのかな?おれに余裕なんて全然ないこと。なまえに触れる度、緊張し過ぎて体中がドクドクと五月蝿い。
 それだけは聞こえないように、いつも小さな耳に手を当てる。

「寝ながらする時膝枕してくれる?」
「え?え?膝……」
「そんなにしたいなら、後でね」

 これ以上は無理な位赤みを増したなまえが、手でパタパタと顔を扇いでいる。否定しないことに気を良くしながら、ゲーム画面へ目を滑らせた。
 なまえがおれの部屋に慣れてきた頃に、キリが良くなくても膝枕してって言ってみよう。



***end***

20131115

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