From:イルミさん
sab:Re:久しぶり


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ナナシってどんな顔しているの?
写メ見てみたい。



-------END-------




「え」


いつものようにイルミさんとメールのやりとりの途中、思わず手が止まる。


イルミさんとメールを交わして2ヶ月。
ついにこの日がやってきてしまった…!

メールのやり取りをしていれば、いつかはぶつかる壁。
相手がどんな人なのか、どんな顔をしていて、どんな声で話すのか。
メールを重ねるほど相手の人がどんな姿なのか知りたくなるのは至極当然の事。私だってイルミさんがどんな人なのか、どんな顔をしているのか知りたい。



だけど…



「……この顔…」


近くにおいてあった手鏡で自分の顔をうつし、ため息を一つついた。

顔を見せてがっかりされたら。イルミさんの想像している女の子とは全く違っていたら。
鏡にうつる自分はお世辞にもかわいいとは言えない、なんの変哲もない地味な顔。会った事がある人と街ですれ違っていても、きっと気づかないと思う程のレベル。


メールのやり取りでは気が合っても、写メを交換した途端、冷めてしまったという話は結構聞かれる。
顔が見えないからこそ、自分の理想の相手を想像してメールをしてしまっている事が多い。


このままの状態でいた方が今まで通り、イルミさんとメールできるのかもしれない。


それに…。
イルミさんには隠していることもある。
親しくなればなるほど深く胸に刺さる、それ。
いつまでも隠し通せるものではないと分かっていても、今言うのは怖い。



「どうしよう…」


見せるべきか、見せないべきか。
答えの出ない自問に1人で悶々考えこんでいると、また1通メールが届いた。




From:イルミさん
sab:Re:Re:久しぶり


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そんなに考え込まなくていいよ。
また今度でいいし。



-------END-------




あぁ、きっと呆れられちゃった…。




答えの出ない自問がイルミさんのメールを見た瞬間、後悔と自己嫌悪へと変わる。ぐるぐると、まるでマーブル模様のように。



そんな事を延々と考えていたらいつの間にか仕事へ行く時間になった。

憂鬱でとても仕事なんかする気がしないけど、休む訳にはいかない。
身支度を整えて、重い足取りで家を後にした。







知りたい、でも知られたくない
(答えの出ない自問はじわじわと毒のように胸を侵す)





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