瀬戸内物語 | ナノ



瀬戸内物語

日輪見上げて

皆さんこんにちは、今日も今日とて観察をしようと思います。
観察する対象はもちろん、我が変わり者の主です。




「もー…毎日毎日、何でこんなに朝早く起きなきゃいけないんですかー」
「うるさい。早く起きねば日輪を拝めぬだろうが」
「日輪だったら昼にでも見れるじゃないですかー」
「日の出を見ずして一日が始まるわけあるまい」

主、元就さんはものすごく朝が早い。日の出を拝むためだと言っているが、日の出を拝むために何故私も行かなくてはならぬのか。まったくもって謎だ。そんなことを同僚にもらしたら、例の如くいい笑顔を浮かべられた。だから何だっていうのか。
そんな不平不満タラタラな私を他所に、元就さんはどんどん先を行く。元就さんは毎朝決まった場所で日の出を見に行く習慣があるのだ。先へ行く背中を、遅れていくとまた文句を言われかねないので小走りで追いかける。

「むうー…だったら他の兵士にでも頼んでくださいよ〜…」

私は眠いんですーと訴えても「貴様それでも日輪の申し子か」と言われてしまった。
言っておくが、私は日輪の申し子になった覚えはない。

「それにお前は仮にも忍だろうが。眠いのなんのと言える立場でなかろう」
「うぐ…最もなお言葉で…」

痛いところを衝かれた。さすが策士。
確かに私は忍だから、その気になれば2、3日寝なくても行動できる。とは言え生来の気質で寝るのが大好きな私に、こんな毎日、しかも朝早く起きろというのは酷だ。給料上げてもらいたいよまったく。買いたい物なんて大してないけど。

「と言いますか、元就さんって私が忍って認識してたんですね」

そりゃ忍として雇われたんだから本業としてやってることくらいわかってるだろうけど。いつもの言動からだと、まるで私が忍じゃないみたいな扱い。
普通護衛として側にいるとき、他の忍なら木の上やらを走らせるのに、元就さんはそれを嫌う。何でか聞いてみても教えてくれないけど。まあそれは構わないが、忍・くの一としてはちょっと複雑だ。忍ばない忍ってどうなの。
そんなわけで、いきなりの『お前忍だろ』発言にはちょっと驚いた。

「いつもは忍らしからぬこと、平気でさせるのに」
「っ、………………」

都合の良いときだけ忍扱いなのは酷いんじゃないですか?とか、そんな感じの意味をこめて皮肉交じりに言う。元就さんは何か言おうとして口を開き、しかし何も言わずに閉じた。

「?元就さん?」
「…何でもない」
「気になります」
「うるさい、さっさと歩け」
「じゃあ木の上走っても「それは駄目だ」
「………………」

ホントに、私みたいな駒に主の考えはわかりません。


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