瀬戸内物語 | ナノ



瀬戸内物語

お世話になります海賊団

「あ、姉御!」
「おはようございます姉御!」
「今日も良い天気っすね姉御!!」
「……コレは何の騒ぎですか元親さん」
「…………………………」

いつの間にやら集まってきた『野郎共』さんたちを目の前に、私は呆れ、元親さんは苦笑いを浮かべた。


そもそもの始まりは今日の朝。無事に(?)目的の地で目的の人物にも会え、しばらく厄介になる了承を得た私は、城の人々に挨拶をしようと部屋をあとにした。もちろん、一人じゃ迷うだけだろうから誰かに案内をしてもらうつもりで。最初はその辺にいる兵士にでも頼もうとしていたのだが、部屋から出てすぐに元親さんに会い「案内するから付いてこい」と半ば強制的に引きずられていった。屋敷の方は昨日のうちに挨拶した、と言ったら兵士の人たちに挨拶でもしに行くかという話しになり、現在に至る。


目の前には目を輝かせた『野郎共』さん。
変に幸せそうな威圧感(政宗さんによると『おーら』というものらしい)を放出していて、気のせいか押され気味だ。何となく言葉を発するのが躊躇われて、元親さんに目で訴えてみる。
すると腰に手を回され引き寄せられた。何だ何だとうまく働かない頭で考えていると、周囲の『野郎共』さんの『アニキー!』という歓声が聞こえる。

「野郎共!コイツは俺の女だ!手ェ出したらただじゃおかねぇ!!」
『わかってますぜ、アニキー!』
「え、ちょ、元親さん!?」

思わず首が吊りそうなほどの勢いで元親さんを見上げる。
そんな設定いつ作った!そんな訴えの叫びは見事に歓声に呑まれていった。





「元親さん!?私は元親さんの女になった覚えなんてありません!」
「それは俺が悪かった!だから説明ぐらいさせろ!」

あれから盛大な『姉御コール』を受けながら部屋に戻った。とにかくさっきの対応に納得できない私は、すぐに元親さんに詰め寄った。私の剣幕に驚いたのか、反射的に後退りする元親さん。少し罰が悪そうに、理由とやらを話し始める。

「お前な…毛利んトコでどんな生活してたか知らねぇけどよ、ココは血気盛んな野郎共だらけだぜ?」
「そんなこと今さらじゃないですか」
「だから!お前みたいに女が一人入ってきたら盛り上がりもするだろ?盛り上がるだけならいい、下手したら食われるぞ」

葵はそういう警戒心に欠けるからな、なんて呆れながらに言われた。ムッとしたが、確かに元就さんにも言われたことがあるのを思い出して、文句を言おうと開いた口を閉じた。

「『俺の女だ』って言っときゃ他の奴等は手ぇ出せねぇだろ?」
「まぁ…元親さん、慕われてますしね…」

何だか納得するのが酌だが、少なくとも私のことを考えてやったことのようなのでこれ以上聞くのはやめた。はあ、と息をついて畳に座る。
疲れ気味の私を見て意地が悪そうに笑う自称・鬼ヶ島の鬼。

「まあ俺としてはお前が俺のとこに来てくれた方が嬉しいんだがな。たっぷり可愛がってやるぜ…?」
「ーッッ!」

耳元で、低い声で囁かれ、背筋がゾーッとして顔に熱が集まる。気が付けば腕の中に閉じ込められていた。
あぁもう、この間といい何なんだ本当に!

「ちょ、いい加減離してください刺しますよ」
「色気ねぇなぁ」
「余計なお世話です!色気を求める相手を間違えてます!」

まったくもう、と心底呆れていると「わりぃわりぃ」とまったく悪びれた様子もなく謝られた。ようやく開放されて一息つく。

「もう瀬戸内は怖いから他のところ行こうかな…」
「まあ待て、俺が悪かったからもう少しここにいろ」
「説得力なさすぎです」

せっかくはるばる瀬戸内海を越えて来たってのにこれじゃ大して変わらないじゃないか。そもそも前に来たときはこんなんじゃなかったような…いや、前と変わらないか?

「だから悪かったって…お前がいると士気も上がってちょうどいいんだよ」
「…私一人が来るだけで士気が上がるほど女っ気がないなら誰か娶ればいいのに」

元親さんがその気になれば女の1人や2人軽いんじゃないんですか?と付け加えれば、「好敵手が多くてな」と、苦笑しながら答えた。
それが誰なのか気になったが、これ以上この手の話を続けるのが億劫になってきたのでその質問は胸の内にしまっておくことにした。

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