krk | ナノ


 滲む色彩

「なんで理緒ちんて赤ちんだけ名前で呼んでんのー?」
「随分突然だね」
「僕も気になります」
「黒子くんまで?そんな大した理由はないんだけど」
「俺と理緒さんの親同士が仲良くてね、幼い頃からの付き合いなんだ」
「わっ、何処から出てきたの征十郎くん」
「さっきからそこにいましたよ」
「そ、そっか…まぁそう言うわけで、私のもう一人の幼馴染なんだー」
「ふーん」
「じゃあ、主将と赤司くんも幼馴染なんですか?」
「俺はちげーよ。こいつらが幼馴染ってことすら最近聞かされたしな」
「怒んないでよむらにじ」
「怒ってねぇ」
「理緒ちん変な顔ー」
「ふらひゃひはらふん、ひゃふへへほー!」
「えーなんてー?」
「紫原くん助けてよーだと思います」
「ぷはっ!虹村のバカ!痛いわ!」
「そんな力入れてねーよ」
「でも最初は苗字で呼んでたよなー?」
「青峰くんまでいつの間に。
最初はほら、中学上がりたてで新しい環境だし、結構久しぶりに会ったから名前呼ばれるの嫌かなーと思って」
「理緒さんに赤司くん、なんて呼ばれたことないから驚いたよ」
「結局今まで通り名前でってことになったんだけどね」
「ふーん」
「ほー」
「何かなその不服そうな顔は」
「なー、オレ大輝って言うんだけど」
「敦だしー」
「僕はテツヤです」
「いや知ってるけど……」
「お前らガキか」




「……と言うことがありまして、何か良いあだ名をお願いします」

並んでドリンクのボトルを洗うさつきちゃんに尋ねる。すっかり暖かく、日によっては暑いと感じるこの頃、蛇口から流れる水がひんやりと心地良い。

「理緒先輩モテモテですねー!」

年頃の女の子らしく、その手の話題に目を輝かせるさつきちゃんはとても可愛らしい。そう言えば、「先輩の方が可愛いです!」と力説され、可愛い子に可愛いと言われて悪い気がするわけもなく、私は口元が緩んだ。

「何かこう、呼びやすくて可愛い感じがいいな。紫原くんとか長いし噛みそう」
「あはは、わかります」
「名前で呼ぶのは何か、要らぬ誤解を生みそうで…」
「確かに…皆モテますもんね」

中学に入ってから周りは色恋沙汰には敏感に反応する。幼馴染である虹村はその中でも女子の憧れの存在であることは周知の事実だった。
強豪バスケ部のレギュラーともなればそれだけで注目されるのに、皆揃いも揃って顔も良いときた。彼等と校内で話しているだけでも自然と注目されるのだから、あまり目立つことが得意でない私にとっては、下手に誤解を招くようなことは避けたい。

「でも、理緒先輩が名前で呼ばなくても、皆が理緒先輩を名前で呼ぶから、結局目立ちますよね」
「……確かに」

そもそもカラフルな彼等と共にいて、目立たずにいることは不可能なのかもしれない。




(270531)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -