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 兼ねる

「デンジデンジデンジー!!!」

何時ものようにジムの改装に勤しんでいると、騒がしい声とともに勢いよく扉が開いた。声で察しはついたが一応振り向くと、ずぶ濡れの幼馴染み兼悪友のリオが立っていた。なにしてんだこいつ。

「デンジシャワー貸して!」
「勝手に使え部屋に入るな感電すんぞ」

一気に捲し立てると、リオは「ありがと大好きニート!」と早口で言うが早いか出るが早いか、颯爽と部屋を飛び出していった。一言余計だ。それはそうと雨でも降っているのか、と窓を覗けば清々しいほどの青と白。窓が濡れていないところを見ると、ゲリラ豪雨でもなさそうだ。なぜあんなに濡れる。つーか、あんなずぶ濡れでよく電気タイプのジムに入ろうと思えたな。
溜め息をひとつ溢し、持っていた工具を雑巾に持ち変えて床の掃除を始める。万が一感電でもしたら俺が責任をとらねばならなくなる。あっという間に水分を含んで重みを増した雑巾を絞るとほんのりと潮の香りが鼻をくすぐった。あの阿呆は海に落ちたのか。もうひとつため息を落とすと、雑巾と海水の入ったバケツを手に取り部屋を出た。





「おいリオ入るぞ」

答えを聞く前に浴室のドアを開けば、シャワーどころか優雅に入浴を楽しむアホが阿呆がいた。今に始まったことではないが、図々しい。目を真ん丸にしてこちらを凝視してくるリオを横目で見ながらシャワーを出す。

「な、なななななんでデンジ入ってくんの!?」
「自分ちの風呂入って何が悪いんだよ」
「いやいやいや私入ってるし」

慌てるリオを無視して無理やり横に追いやり、リオを抱え込むように浴槽に滑り込んだ。流石に少し狭い。

「…何今更意識してんだよ」
「だって…」

恥ずかしいものは恥ずかしい。小さくそう呟いたリオは確かに成長した"女"で、不覚にも胸がざわついた。何か言おうと口をあけて、息だけ吐いて閉じた。

「…別に今は取って喰おうなんて思ってない」
「あぁもうそういうことさらっと言わない!!」

もう出る!と立ち上がるリオを引き留め腕の中に抑え込む。拗ねたように湯船の中で体育座りをするリオは、幼いころから変わらない。

「お前さっき俺のことニートとか言ってたけどな、ジムリーダーは立派な仕事だ」
「めったに挑戦者来なくて街を停電させまくってるのに?」
「暇なんだよ」
「働けよ」
「だからよりよいジム作りのために努力を惜しんでないだろ」
「まじでか、よりよいどころか来るたびに入りづらくなってんだけど」
「うるさい」
「デンジ好きじゃなきゃこんなとこ来ないし」
「急にデレんな」
「照れた?」
「そろそろ口閉じないと、」
「はい黙ります!」

そうだ、変わったのはリオじゃなくて、単なる幼馴染兼悪友ではなくなったことくらいだ。

「幼馴染兼悪友兼恋人って、すごい欲張りだよね」
「ありがたく思え」
「上から目線!でも好き!」
「知ってる」
「えへへー」
「(…可愛い)」


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テンポ良い会話を書きたかったけど見事に失敗した系です。
(120921)

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