2014~ | ナノ


 幸せの風景


窓から差す日の光と、微かな寒さで目が覚めた。朝はどうも苦手だ。上手く回らない頭に、心地良い布団の温もり。起き上がるのが億劫で、布団を身体に巻き付ける。今日は何だか、一段と起き上がれない。ぼんやりする思考と、身動ぎすれば小さく痛む下腹部に、もう一度意識を手放したくなる。
そう言えば、隣にあるはずの温もりがない。夏が近いとは言え、海辺の街は朝夜が冷える日も多い。暫く布団にくるまり右へ左へ転がっていたが、余り放っておくのも後が面倒だ。気怠い身体に力を込めて、布団から抜け出す。


「…はよ、デンジ」
「おー」

のそのそとリビングへ向かうと、珍しくキッチンに立つ黄頭がいた。寝惚け眼を擦りながら、デンジの腰に巻き付く。あー、あったかい。普段包まれている愛しい匂い。背中に顔をぴたりとくっつければ、再び眠りの世界へ誘われる。

「ここで寝るなよ」

苦笑いしながら私の頭を撫でつけると、デンジは両手に皿を持ってテーブルに向かった。離れた温もりに口を尖らせながら、しかしテーブルに置かれたものにまだ半分夢心地だった頭が完全に覚醒した。
ソーセージとスクランブルエッグ、レタスとトマト、と1枚の皿に彩り良く盛られた朝食に目を輝かす。

「デ、デンジどうしたのこれ……」
「たまにはいいだろ」

かたりと椅子を引いて、自分は反対側に座るデンジは、少しだけ照れたように耳が朱に染まっている。長年の付き合いだからこそ気付く小さな変化に、どうしようもないくすぐったい気持ちになる。

「作らせちゃってごめんね、ありがとうデンジ」
「しっかり味わえよ」

ぶっきらぼうにそれだけ言うと、こちらを見ずに食事を始める。それがまた可愛くてくすりと笑うと、いいから早く食べろよ、と急かされる。にやにや笑う私に眉根を寄せるも、照れてるだけなのだ。
ああ、愛しい、と胸が満たされる。

「今日は久しぶりに買い物に行こっか」
「俺は荷物持ちか?」
「デンジ、この間なんかのパーツ欲しいって言ってたでしょ?」

だからたまには、普段は面倒でたまらないデンジの趣味に付き合おう。作ってもらったレアな朝食を味わいながらお出かけのお誘いをすれば、驚いた顔をした後、デンジはくつりと笑った。



(140713)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -