2014~ | ナノ


 無自覚大爆発

僕の恋人であるリオは、それはそれは可愛らしい。バランス良く配置された目鼻立ちはくっきりしていて、人の顔の好みは幾通りあろうと、10人に聞いたら9人は確実に「可愛い」もしくは「綺麗」だと評するであろう整った顔。絹糸の様に指をすり抜ける髪は、特別手入れに力を入れているわけではないと言うから驚いた。スタイルだって、スラッと伸びた手足は縦横無尽にあちこちを旅する程健康的で、所謂出るところが出てる理想的な体型だ。全国を旅する彼女は、手持ちは勿論、あらゆるポケモンに優しく、また人に対しても物腰柔らかで慈悲の心に溢れている。コロコロ変わる表情は見ていて飽きないし、隣に居るだけで幸せだと思える。

そんな自慢の恋人に、たった一つだけ不満がある。

「あ〜もう可愛すぎる〜!!」

目を輝かせてエアームドに頬擦りするリオは、それはもう愛らしかった。バトルの時に見せる凛とした表情は何処へやら、頬を緩ませ、眉を下げ、見ているこっちが恥ずかしくなるくらい幸せそうに顔を蕩けさせている。スリスリと擦り寄る柔らかい頬は、鋼の肌に触れてやわやわと形を変える。頭を撫で、羽を撫で、全身で愛情表現をするリオを前にして、懐かぬポケモンはいないと思う。

彼女は底抜けにポケモンを愛していた。
この世界に置いて、殆どの人間がポケモンと共に生き、愛していると思う。しかし、彼女のソレは凄まじかった。特定のパートナーは勿論、出会うポケモン全てに最上級の褒め言葉を送り、例え野生であろうと彼女の周りは自然とポケモン達が集まってきた。
今抱き締め合っているエアームドも、つい先程たまたま出会った野生だ。決して捕まえてなどいない。しかし、エアームドもハートマークが飛び交うのが目に見えるように、嬉しそうに羽根を揺らしている。こうなると、少なくとも1時間は終わらない。
外へ出てポケモンと出会おうものなら、最高の賛美と抱き締め合うこと1時間。家へ帰れば、いや、外にいようとリオの手持ちは好き勝手にボールから出てきては愛を深め合う。
その間、恋人である僕はそっちのけだ。どちらか優劣を付けるのは難しいだろうけど、ポケモンに負けてる気がして、なんだか、


*******


私の恋人であるダイゴは、それはそれは大層な美男子である。スッと通った鼻筋、切れ長の涼し気な目元、小さく笑みを浮かべる口元が、美しさを計算し尽くしたかのように配置されている。ツンツンした銀髪は、日の光に当たるとキラキラと輝き、嫉妬することすら馬鹿らしくなるほどにカッコいいのだ。10人に聞いたら10人がカッコいいと答えるほど整った容姿を持つだけでなく、ホウエンきっての大企業の御曹司、ホウエンリーグのチャンピオンと、神様は彼に一物どころか与えられる全てを与えたのではないかと言うほど、ありとあらゆるものを与えてしまったようだ。見た目や経歴、肩書きだけでない。恋人には勿論、パートナー達にも深い愛情を注ぎ、新米トレーナーなど彼に憧れ慕う者にも優しく後身の指導にも熱心な彼は、神に愛された人間なのだと思う。

そんな自慢の恋人に、たった一つだけ不満がある。

「…それでこの石はシンオウのテンガン山の最奥で見つけたもので、こっちは…」

机の上にいくつもの石を並べ、一つ一つ丁寧に拭いていく。拭きながら、その石達との出会いを熱心に語るダイゴは、バトルをしている時と同じか、もしくはそれ以上の熱っぽさを孕んだ瞳で石を見つめる。割れ物を扱うように丁寧に触れる、慈しみさえ感じる指先。
石に嫉妬する日が来るなんて、誰が想像しただろう。無機物で、感情どころか性別すら無いはずの、どこにでもあるもの。そう言ったらダイゴは怒るだろうけど、石を磨き、語るダイゴの目には私は映らない。石に負けてる気がして、なんだか、




「悔しい、と」

高そうなカップに注がれた紅茶を前に、ミクリは呆れたようにやれやれ、と首を振る。話し終えたリオとダイゴは、初めて聞く相手の心情に、気まずそうにしていた。なんでこんな状況に、と二人の顔にありありと書いてあり、ミクリはくすりと笑みを零した。

事の発端は、ミクリだった。定期的に3人で開くお茶会で、ふと「2人はお互い嫌なところはないのか」と尋ねた。
普段周りが羨むほどに仲睦まじく、喧嘩をしても後に引かず、さっぱりしているリオとダイゴに対して抱いた、純粋な疑問だった。
2人はそうだな、と考え込み、一人ずつ口を開いた結果、冒頭へ至る。
お互いの嫌なところを赤裸々に語った訳だが、前置きの惚気っぷり、そして嫌なところも、聞きようによってはただの惚気だ。
気まずそうに、しかしお互い意識しながらチラチラし合う様を見て、ミクリは高らかに笑った。突然笑い出したミクリにビクリと肩を揺らし、リオとダイゴはミクリを見やる。

「ホウエン、いや、全地方と全読者を代表して言おう!
リア充爆発したまえ!!」






なんだこれは
(150219)

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