セキエイ | ナノ

ぐるり巡った想いの末路は、


「よかったわね、買っておいた指輪が無駄にならなくて」
「まぁ、な。お陰様でうまくいったよ」
「まったく、見てるこっちがじれったかったわ」

 うまくいくとは思ったけどね、と面白そうに笑うカリンは、激しいバトルを繰り広げているリオとヒビキの方を見やった。先日の約束通りセキエイリーグを訪れたヒビキとコトネは、リオを見るなり勝負を申し込んだ。バトル好きのリオがそれを断わるはずもなく、チャンピオンの間を貸し切って先ほどから三人で盛り上がっていた。ワタルとカリンはリオらしい、とその様子を見守るのだった。



「リオさん、 また旅に出るんですか?」

コトネの問いに、ワタルとリオは顔を見合わせた。どちらからともなく笑い出すと、コトネとヒビキは首をかしげ二人を見上げる。

「ううん、しばらくは行かないわ。と言うか、もう旅行くらいしか行かない、かな」
「そうだな、しばらくはこちらで話し合わないことがある。次の旅行は二人で、だな」

含みのある笑みを浮かべた回答に、コトネは何か察したのか「もしかして!」と顔を赤らめた。コトネに視線で問われたカリンは、いつものように悪戯っぽく笑いながら小さくウインクで返す。それで確信を得たコトネは年頃の女の子らしくいいなぁ、と羨望の眼差しで二人を見上げ、それから1人状況についていけないヒビキに耳打ちするように顔を寄せる。

「えっ、えっ、えええええ!?」
「そういうことでいいんですよね!?おめでとうございます!」

キラキラと目を輝かせて見上げるコトネと、顔を真っ赤にしながら驚くヒビキ。改めて周りの人に言葉にされ、照れながらはにかむリオと、微笑ましそうに見守るカリン。
ワタルはそんな四人を見ながら、今更ながら、プロポーズが上手くいったのだと、どうしようもない高揚感に身を震わせた。

「結婚式、呼んでくださいね!」
「ワタルさんとリオさんの結婚式なら、余興はバトルですね!」
「いや、結婚式くらい淑やかに…」
「わー!それいい!楽しそう!」
「新婦はやる気満々みたいよ、新郎さん?」
「……新婦に任せよう」

緩やかに進む日常の中で、ようやく想いが重なった今、向かう未来が眩しく温かい幸せに満ちたものだと、自然と笑みが浮かんだ。



(140504)