Le ciel | ナノ



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ソノオタウンは都会の喧騒から離れた、花畑にある町だった。色とりどりの花が咲き乱れているが、しかし強すぎない花の香りが鼻腔をくすぐる。カイリューから降りたリオは花を踏まないようにそっと地に足をつけた。心地のよい香りにうっとりするカイリューの横で、リオはタウンマップを広げ、町の地図を探し始めた。さほど大きくもない町で、目当ての施設はすぐに見つかった。

「とりあえずポケモンセンター、っと」
「あーっ!!リオさーん!!」
「…?」

ポケモンセンターへと足を向けた矢先、後ろからものすごい勢いで近づいてくる足音と音源であろう人物の声が聞こえた。聞き覚えのある声に振り向くと、全速力で走ってくるジュン、その少しあとを追いかけるコウキが見えた。相変わらずせっかちな子だとリオが笑いをこぼすのと、コウキがジュンに見事な右ストレートをお見舞いするのはほぼ同時だった。

「ほんっとすみませんいつもいつも…ほらジュン、リオさんにちゃんと謝って!」
「そんな迷惑かかってないし大丈夫だよ」
「ほらーリオさんだってそう言ってるんだし!」
「調子に乗るな!」
「えーっと二人はハクタイシティに行く途中だったりする?」

コウキの目が怖かったのと、いい加減殴られるジュンが可哀想になってきたリオはそれとなく話題を変えた。コウキはいい子だが、ジュンよりも無自覚にとんでもないことをする人を知っているリオにとってはジュンは弟のようで可愛いものだった。再度大丈夫だよ、とコウキに伝えるとそれでも少し眉根を下げながらまた会えてうれしいです、と口にした。あぁもう本当に、かわいい子たちだ。そう癒されているリオを余所に、コウキとジュンは顔を見合わせて、それから口を開いた。

「さっきそこで女の子に「パパを助けてほしい」って頼まれたんだ」
「パパ?」
「なんでも変な奴らにたにまのはつでんしょで女の子のお父さんを閉じ込めているらしくて…」
「ソノオの花畑で悪さをしてた奴らからはつでんしょのキーをもらったから、これからはつでんしょに行くんだ!」

正義感にあふれたコウキとジュンの話を聞きながらたくましい二人を微笑ましく思ったのもつかの間、昼間の出来事を思い出して嫌な予感がする。おそるおそる二人に「その悪い奴らって、もしかしてギンガ団って名前…?」と口にすると、二人は思い出したように「そうそう!」とうなずいた。嫌な予感が的中するのほど嬉しくないことはない。

「あー…私も行くわ」
「俺らでも余裕だと思うけど、リオさんがいてくれるならさらに心強いぜ!」
「すみません、巻き込んじゃって…」
「いいの、どうせ通り道だし。それより早く女の子のお父さんを助けないと」

得体の知れない集団の元に新米トレーナー二人だけで行かせるわけにはいかない。かつて自分がそうだったように、下手をすると命を落とすことになりかねないのだから。先程まで走っていたというのに再び走り始めたジュンを追いかけるようにしてリオは走り出した。


(120313)