Le ciel | ナノ



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「ポッチャマ、あわ!」
「ルクシオ、スパーク!」

ポッチャマのあわにスパークを当てたことにより通電性が増し、威力が増したまま相手のニャルマーたちにヒット。効果は等倍なものの、威力とレベル差でニャルマーたちはあっけなく瀕死となった。怪しい二人組…もといギンガ団は唖然として倒れたニャルマーたちとリオとヒカリを交互に見た。どうやら二匹目のポケモンはいないらしい。予想通りのあっけなさにホッとするやら物足りないやら、複雑な心境である。

「今日はここで引き上げます。なぜならギンガ団はみんなに優しいからです」

倒れたニャルマーたちを抱えながらそう言うと、二人組はどこかへと走り去った。あぁデジャヴ。数年前の出来事を彷彿させる組織だなぁと遠い目をするリオに、ヒカリはポッチャマを抱きかかえながら興奮気味に近づいてきた。

「リオさん、ありがとうございます!リオさんのバトル、すっごく勉強になりました!!」
「いえいえー。それより博士、大丈夫でした?何で絡まれてたかは大方予想がつきますけど…」
「うむ、ギンガ団はポケモンが進化するときに出す何かしらのエネルギーが、何かに使えるものなのか調べようとしていたらしい」
「それで博士の研究成果を無理矢理奪おうとしてきて…そんなのダメですよね!」

博士はポケモンの進化について研究しているんですよ、とヒカリが誇らしげに言う姿が微笑ましい。どこの地方にも変な団体はいるものだと、ある種の感動すら覚えるリオにとって、こうした正義感のある新米トレーナーは実に頼もしいものだった。彼女がそばにいれば博士も大丈夫だろうと、安心できる。

「リオくんならばこの先ギンガ団が現れようと心配なさそうだな。とはいえ、まだまだ分からない集団だ、注意して旅を続けてくれ」
「はい、何かわかったら一応連絡しますね」
「リオさん、気を付けてくださいね」
「ありがとう、ヒカリちゃんも気を付けて」

定期的な連絡をすることを約束し、博士とヒカリは研究所のあるマサゴタウンへ引き返した。リオ二人の後ろ姿が見えなくなるまで見送り、次の街へ進もうと一歩を踏み出した、その時。

「いやーいい!いいね今の!」
「……えーっと?」
「あ、私テレビコトブキの者です。今のバトル見てましたよ!」

何やら興奮気味な人に呼び止められた。そういえば、コトブキシティには大きなテレビ局があったような気がする。再びめくるめく嫌な予感がし、顔が引きつる。

「ぜひ今のバトルをテレビ放送したいんですが…って、きみ、どっかで見たことある…?」
「き、気のせいじゃないですか?ほら、よくある顔ですし!」
「……あーっ!きみもしかしてリオちゃんじゃ」
「カイリュー、飛んで!!」

テレビ局の人が名前を呼んだ瞬間、腰につけたボールを外し、カイリューを出した。長い付き合いなだけあって、多くを言わずとも理解してくれる最愛のパートナーは、リオの指示通りリオを背に乗せるとすぐに飛び立った。急上昇するカイリューから落ちないようにしっかりとしがみつきながら、そらをとぶを使えないことを思い出す。近場の森に着陸するようにカイリューに頼みながら下を見ると、テレビ局の人の叫び声といつの間にか増えたギャラリーが上を見上げて歓声を上げていた。

「…やっちゃったねーカイリュー」

どんまい、と言うように首を振るカイリューを撫でながら、やっぱりメディアは苦手だと再認識したリオだった。


(120308)