Le ciel | ナノ



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明らかに厄介な出来事が目の前で起こっており、知り合いが巻き込まれているが回避しようと思えば回避できる状況において、選択肢はいくつあるだろう。
一つは知り合いを見捨てずに助けに行きともに解決、二つ目は知り合いを信じ(決して見捨てるわけではない)自分は厄介ごとを回避、三つ目は回避しようとして巻き込まれる羽目になる。残念ながら、私は三つ目のパターンで厄介ごとに首を突っ込む羽目になるのが常である、不服ながら天性とも言うべき巻き込まれ体質だった。


状況を簡単に整理しよう。クロガネジムで無事バッヂを手に入れた私リオは次の街へ向かうべくいったんコトブキシティに戻ってきた。バッヂを手に入れたことでひでんわざが使えるようになったため、いわくだきを使える手持ちをポケセンで呼び出し、意気揚々と洞窟に向かう途中だった。コトブキシティの街外れに、見知った二人が変な服の二人組に絡まれていたのだ。今までの経験から嫌な予感しかしなかった。二人ーーナナカマド博士とヒカリちゃんーーには申し訳ないが、まぁ街外れとはいえ都会の入り口なのだから、人通りもある。最悪の事態になる前に誰かが通るだろう。ならば建物の影に隠れながらやり過ごせるー

「おぉリオ!!ちょうどいいところに来た!」

と思った時が私にもありました。お約束というかなんというか、目ざとく私を見つけた博士が声をかけたせいでほかの3人も私に注目してしまった。そうなれば見て見ぬ振りもできず、しぶしぶながら4人の元へ向かった。

「どうだ、旅は順調か?」
「え、えぇまあ」
「君にとっては朝飯前のことかもしれんが、見知らぬ土地で新しいポケモンと旅するのも良いものだろう」
「そうですね、あの、」
「リオさんダメです、あいつらのこと見ちゃ」

親しげに話しかけてきてくれるのはありがたいが、それは目の前に
殺気を出す人がいなかったらの話だ。遠くからでもへんてこな服に見えたが、近くで見ると変と言うかなんと言うか、悪趣味なコスプレ衣装のようだった。そんな衣装に身を包んだ二人組が、睨んでくる。めくるめく嫌な展開しか思い浮かばず、切なくなる。チラリと盗み見るとヒカリちゃんが慌てて忠告をくれたが、私の脳裏にはカントージョウトを騒がせた某集団が浮かんで消えなかった。
目の前にいるのに丸っきり存在を無視して進む話に腹を立てた二人組は、しびれを切らしたように声を張り上げた。

「これは困ったポケモン博士ですね!我々はお仕事としてお話しているのです」
「というか、我々の話を聞け!というのです」

ぷんぷんというベタな効果音がつきそうな怒り方だった。二人組には申し訳ないが、彼らには迫力というものが決定的に不足していた。そこはとなくかおる雑魚臭。なむ。心の中でそっと手を合わせる。
そう私がひっそりと相手に同情していると、今度は博士がキッと二人組を睨み付けた。こっちの方が何倍も凄みがある。

「おまえ達、煩いぞ!本当に困った奴らだな。おまえ達の悪いところ、その1。用はないのにいつまでもいるな」
「ですから用は」
「その2。人の話の邪魔をするな」
「それは」
「その3。思い通りにならぬからと大声で脅すんじゃない」
「な」
「その4。集団でいることで強くなったと勘違いするな」
「っ」
「その5。そもそも、そのおかしな格好は何なのだ!?」
「「‥‥‥‥‥」」

間。嫌な予感がした。

「キーッ!!頭にきました!こうなったら力ずくです!ギンガ団をバカにしたこと、後悔させてあげますよ!」
「よしっリオ、ヒカリ任せたぞ!」
「えええ…」
「行きましょうリオさん!!」

予感的中、キレた二人組はボールを構えた。ヤル気だ。博士自身はポケモンを持っていないようだし、ヒカリちゃんはまだ新米トレーナーだ。いくら相手がしたっぱ染みていても二人相手は厳しいだろう。こうなってしまっては相手をする他なかった。溜め息を1つつき、ルクシオの入ったボールを宙に放った。

(120307)