Le ciel | ナノ



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「…負けたよ」

倒れたズガイトスをボールに戻しながらヒョウタは言った。悔しそうに、でもどこか嬉しそうに。リオはポッタイシを抱き上げ、ヒョウタに近付いた。

「いいバトルでした。流石ジムリーダーですね」
「参ったな、こんなに圧倒されたのはいつぶりだろう」

リオの経歴を知らないヒョウタからすれば、丸っきりの初心者がこんな手慣れたバトルをするとは思わなかったのだ。もちろん手を抜いたわけではないが、手持ちだけ見れば駆け出しの新米トレーナーなのだから妙に慣れた指示に驚いた。
雰囲気からそんな驚きを感じたリオは苦笑した。かと言って説明するのも何となく違う気がして、誇らしげなポッタイシを撫でる他なかった。
ヒョウタからバッジを受け取り、リオは気になっていたことを尋ねた。

「ヒョウタさん、他にポケモン連れてますよね?」
「え?あぁ、個人的に、ね。よく気がついたね」
「腰につけてるボールから異様な闘気を感じると言うか…」

言葉に詰まるリオを、今度はヒョウタが苦笑しながら腰のボールを外した。すでにカタカタと音を立てて揺れている。

「ここのクロガネジムはシンオウ地方の中ではわりと初心者向けのジムでね、ある程度のレベル制限があるんだ」
「じゃあその子はジム以外でのバトルに?」
「そう言うことになるね。でも最近はジム戦ばかりだったから…」

闘わせろと騒いでいたらしい。苦笑するヒョウタに小さく笑うと、リオは腰につけたボールからカイリューを出した。突然の登場と初心者と思っていたリオが扱いの難しいドラゴンタイプの最終進化系を持っていたことに驚いたヒョウタは、しかし今までの疑問が解決して納得したように笑った。

「ははっそうか、やっぱり君は初心者じゃなかったんだね」
「すみません、隠すつもりはなかったんですが…」
「大丈夫だよ、別に誰か来ちゃダメなルールがあるわけじゃないし」

「そうだ、君なら来れるかもしれないね」
「?」

ジムリーダーやジムリーダーが認めたトレーナーしか入れない場所。そんなところが、ここシンオウ地方にあるらしい 。普段フルメンバーで闘うときはそこへ行くのだとヒョウタは言う。なるほど、ジムリーダー同士でバトルとはなかなか良い刺激になるのだろう。

「君と再戦できる日を楽しみにしてるよ!」
「こちらこそ、今度はフルメンバーでお願いしますね」
「今度はそう簡単に負けないさ」
「ふふ、楽しみにしてます」

一期一会の旅だけれど、一生の別れはない。こうして再会の約束をできることが旅の醍醐味だと、しみじみ思うリオだった。


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1年以上待たされてバトルカットとはヒョウタに同情を禁じ得ません。
反省はしている(…)

(120227)