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ふたりごと


「それで、意中の方とは上手くいったのですか」

いつものように机を挟んで、コーヒーカップを片手にノボリは言った。ノボリが声を発したことは気が付いたけど、内心それどころじゃなくてぼくはぼーっとしていた。そんなぼくに呆れるように、ノボリは大きくため息をつくと、ゆっくりとコーヒーカップに口をつけた。ちょっとだけ、嬉しそうに笑ったような気がした。




結論から言うと、ぼくとリオは付き合っていない。お互い考えてることは一緒、なんだと思う。でも、出会って間もないぼくらには、「付き合う」にはまだ早かった。

「私、ずっとあなたのこと見てました。最初は毎朝忙しそうだなって思ってただけだったのに、気が付いたら目が離せなくなってたんです」
「ぼくも、毎朝大変そうだなって、気になってた。そんなお客さんはたくさんいるのに、君だけ見てた」
「ふふ、私たち、似た者同士ですね」

そうやって綺麗に笑うリオを見て、初めて「恋に落ちる」って言葉を身を以てわかった気がした。声も、笑顔も、流している涙も、リオを作り上げてる全部が愛しい。リオくらいしか知らないのに、変なの。

「私、たぶん好きになっちゃったんだと思います」
「ぼくも、君のことすき」
「でも私はあなたの名前すら知りません」
「ぼくも君の名前しか知らない」
「だから、」

お友達から始めませんか。そう言ったリオはすごくすごく、綺麗だった。強いトレーナーとバトルをしている時とはまた違う、ドキドキが止まらなかった。
リオがぼくのことを知りたいと思ってくれてることが嬉しくて、リオがぼくと同じこと考えてるのが嬉しくて、心が満たされていった。ぼくもできる限り最高の笑顔でうなずくと、リオは優しく笑ってくれた。



出会えたことが奇跡なら、その先の未来も奇跡の連続
出会えた奇跡に感謝しながら、今度は二人で奇跡をつくりにいこう

Fin,

(あとがき)

さっさと終わらすとか言ってたのに気が付けば1年越しの完結…これだから筆無精は!( ;∀;)
お察しの方もおられるかもしれませんが、RADの「ふたりごと」に感化されて書き始めたのが始まりです。そのためあえて読みづらさ覚悟で二人の視点から書く、という面倒な書き方をしてきました。
物足りない終わり方と思われる方もいると思いますが、私自身はわりと書きたいことを書けたので満足してます。
番外編とか二人のその後とか書けたらなぁと思います。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!

20120802 桧



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