小話 | ナノ
→→




「それにしてもワタルがホテルとるなんて珍しいね」

備え付けのベッドに転がり込みながら、マントを脱ぐワタルを見上げる。久しぶりの柔らかい布団の感触が心地好くて、気を抜いたらすぐにでも夢の世界へ引き込まれそうだった。


「久しぶりにリオと会ったんだ、少しくらい張り切ってもバチは当たらないだろう?」

ワタルはそう言いながらベッドの淵に腰を掛けると、優しく髪を優しく撫でた。あぁ、なんでこの人はこんなにいとおしそうな目をするんだろう。手で、目で、全身で、愛してると言われているみたいだった。なんだか恥ずかしくなって枕に顔を埋めるようにうつぶせになると、ワタルは小さく笑ってベッドから立ち上がった。少しの名残惜しさを感じながら、枕と髪の隙間から覗き見るとどうやらお茶を入れているらしかった。




「わざわざ家でなくてホテルに来たってことは、それなりに下心もあるんだが」
「したごこ…え!?」

ワタルの言葉を復唱しようとして、ようやく意味に気がついた。思わず持っていたカップを落としかける。…なにしてんだ見たいな目で見るのやめてくれるかなぁ。

「…そういうのは言わずに隠しておくべきだったんじゃないかな」
「リオが自分から気付いてくれてたら言わなかったさ」

そう言われると、弱い。初めてでもあるまいし、今更恥ずかしがる必要はないかもしれない。けれど、会うこと自体一年ぶりなのだ。そういった行為なんて、尚更。

「…結構、耐えたんだぞ」
「……ごめ、ん?」

謝るところなのかは汲み取りかねたが、切羽詰まったようなワタルの表情に思わず謝ってしまった。あまり見慣れない色っぽい熱を孕んだ表情に不覚にもどきりと胸がときめいた。さらりと、顔にかかる髪を掬われる。壊れ物を扱うように触れられて、私はそんな大したものじゃないのに、と思う。
頬に手を添えられて、目が合う。あ、だめ。ペースに飲まれる。



-----------------
書きたいなぁとぼんやり書き溜めている小ネタの一部。この後の展開で悩んで止まってるのでこの先日の目を見るのかは謎。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -