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「やぁ柊、ちょっと付き合ってくれないかい?」
「内容にもよりますが9割8分嫌です」
「相変わらずつれないなぁ」

残念と口では言うものの、その表情は面白い玩具を見つけた子どものようだった。くつくつと笑うこの男ー郭嘉ーは、いつも捉え所がなくて苦手だ。

「(やっぱり軍師って苦手だ…)」
「今軍師って苦手だって思ったでしょ」
「ソンナコトナイデスヨ」
「ははっ、柊はわかりやすくていいね」

笑顔の下の本性が読めないから、得体の知れない何かを相手にしているような気分になる。嫌いではないし、尊敬もしている。しかし苦手だった。軍略を練るような戦い方よりも、自ら先陣切って駆ける方が得意なのだから、元来の性質なのだろう。

「軍師だからね、相手に何を考えてるか悟られちゃいけないんだよ」
「嫌いではないですよ、苦手なだけで」
「柊のそういう素直なとこが好きだよ」

言いながら顔にかかる横髪を一すくいし、そっと口付けた。近付いた顔からは、やはり表情は見えない。

「またまたご冗談を、」
「人は、自分の持ってないものに惹かれるものだよ」

いつもの戯れ事だと笑うと、存外真剣な目で見つめてくるのだから調子が狂う。読めない表情だが、珍しく揺れる瞳から目が逸らせない。

あぁ、だから軍師は苦手なのだ。どこまでが策でどこからが本心かわからないから。虚実の境目が見えず、策に溺れそうになる。




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オチなどない
ついでに言えば軍師なら誰でも良いっぽい話



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