小話 | ナノ
→→



「追いかけますから」

柔らかそうな赤い髪の間から覗く鋭い眼光が、ほんの少しだけ切なさを孕んでいたから、どきりと胸が跳ねた。自信家で何事にも負けたことのないと言う彼のこんな表情は、見たことがない。
いつの間にこんなに想われていたんだろう。今更戸惑いが生じて、開いた口を閉じた。この場に適切な言葉を探すが、何も浮かばない。ただ、いつもの軽口で返してしまっては、後悔する。それだけは確信していた。

「……待って、る」

絞り出した言葉は、彼に届いただろうか。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -