*臨也さん新妻ネタ





プルルルルル、プルルルルル

「おい、臨也。電話」
「うん」

そろそろ晩御飯時だろうかと思われるこの時間に、2LDKの部屋に電子音が鳴り響く。
丁度二人で今日の晩御飯の準備をしていた時だっただけあってすぐにそれを取る事は出来なかったのだろう。
ジュージューを音を立てて野菜を炒める静雄に言われ、臨也は持っていた皿を一度卓上に置くとパタパタとスリッパの音を立てて隣の居間へとかけていった。

プルルルルル、プルルルル――

「はい、もしもし」
『もしもし。平和島さんのお宅でしょうか?』

音が切れたのを感じ、静雄は耳をそちらに傾ける。
電話に出ると声のトーンが少しばかりあがるというのは本当らしく、確かにいつもよりトーンの上がったその声に思わず口許が緩む。

「ええ、はい。そうですが」
『そうですか。あ、私保険会社の――』

チラリ、と臨也の方を見やってみればエプロンを付けた儘の後姿が可愛らしい。

「はい、はい…。ああ、その件でしたら――」
『ああ、そうでしたか。これは失礼致しました』

そろそろ野菜も炒まり、ジュ、と音を立ててフライパンの上に野菜を滑らせてそれを皿に移す。
ニンジン、キャベツ、ピーマン、色とりどりの野菜が真っ白な皿を飾った。

『重ね重ね失礼致しますが…お名前をお伺いしてよろしいですか?』
「名前…ですか?」

最後に、茶碗に出来たての白飯を盛りつけ、湯呑みにお茶を注ぐ。
静雄には電話主の声こそ聞こえないものの、臨也の声は不思議と耳に馴染んだ。
多分、こうなるずっと前からアイツの声だけを追ってきたから。と静雄は思う。

『ええ。静雄さんではないようですし、かと言って他人や友人ではないようですので…奥様かと思いまして』
「よくお分かりですね。つい1週間程前、式を挙げたんですよ」

照れた様に頬を掻く臨也。
静雄は特に口を出さず、その姿を見つめるだけ。

「俺の名前は――」

しかしそこまできて臨也はピタリと言葉を止めた。
最初こそ怪訝そうに小首を傾げた静雄だが、次の瞬間にはすぐにその理由を理解することとなる。
臨也が僅かに頬を染め困ったように眉をハの字に下げて此方を見ていた。
そんな彼に、静雄は何かを伝えるようににまにまと笑う。

「平和島…臨也です」








初めての電話







ガチャリと電話を切り、未だ火照った頬を携え臨也は食卓に座る。
静雄はと言えば彼が食卓に着くなりからかうようにと言葉をかけた。

「よお、新妻の平和島臨也さん」
「…うるさいなあ、からかわないでよ」
「いいじゃねーか」
「よくないよ」
「堅い事言うなよ。一線を越えた仲だろ?」
「っー!」
「く、くくっ…はは!やっぱ手前は何だかんだで初だよなァ」

食卓を挟んで成される二人の会話。
彼らの夜は、生活は、まだ始まったばかり。







―――――

シズちゃん宅に嫁いで初めて電話に出て照れる臨也さん可愛い。

20110730


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