*七夕ネタ
*冒頭からキス



「っん…」
「は、…っんン…」

打ちっ放しのコンクリートの壁。資料が敷き詰められた本棚。生活感の感じられない内装。冷たい雰囲気を醸し出す室内に粘膜が交わる音と熱い吐息が響く。
見れば部屋の一角にある黒いソファーに艶やかな黒髪が散り、その上で金糸が揺れていた。その口は互いの口で塞がれ、くちゅくちゅと粘着質な音がする。時折離れたかと思えば再び深いキス。どうやら音の正体はこれのようだ。

「ふ…、っう…」
「はぁ…っ」
「はっ…」

十数秒後。流石に酸素が足らなくなったのだろう黒髪の青年が自らの上に覆いかぶさる金髪の青年の背中をトントンと叩いた。すれば彼は銀色の糸を吐きゆっくりと口を解放してやる。黒髪の青年は僅かに頬を紅潮させ、肺に目一杯酸素を取り込んだ。

「……大丈夫か?臨也」
「…ん、大丈夫」

暫くして荒い呼吸が収まった頃、金髪の青年――静雄がそっと黒髪を撫で遣り問うてやれば、青年――臨也はゆっくりと薄く瞼を上げて口許を緩めた。静雄はその赤い瞳に吸いこまれるようにして瞼に触れるだけの口付を落としてやる。

「それより、今日は随分と積極的だったね」
「手前から誘ってくるなんて中々ねえから…興奮した」
「あっはは、本当バカ正直」
「…今日は、化物みたい、って言わねえんだな」
「どうしたの?急に」
「いや、いつもああいう事言うと化物、っつってくンだろ」
「言わないよ、今日は」
「手前こそ、今日は様子がおかしいじゃねえか」
「ん、何かこういう気分だから。いいだろ?偶には」
「悪いとは言ってねえ」

ぎゅ、と互いの体を抱きしめ合いながらポツリポツリとなされる取り留めのない会話。それも途切れてしまえば臨也は再びゆっくりと口を開いた。

「今年も雨だったね」
「…そうだな」
「これで9年間、織姫と彦星は会えていない事になる」
「…そうだな」
「全く、酷い話だよねえ。雨が降っただけで1年に1度の逢瀬が叶わなくなるだなんて」
「…そうだな」
「シズちゃん、さっきからそれしか言ってない」
「…悪い」

クスリ、と臨也の口から小さな笑いが零れる。
それを見て口を開いたのは静雄だった。

「機嫌、良さそうだな」
「解る?」
「何年付き合ってると思ってンだ」
「7年間」
「おう…。多分、そんなもんだと思う」
「自分で振った癖にうろ覚えとか、いかにもシズちゃんらしいよね」
「うるせえ」

そして今度は二人して額を合わせ、クスリと笑った。
暗い外。簡素な部屋。唯一つ、二人の周りの空気だけは酷く暖かいものだった。

「ねえ、シズちゃん」
「なんだ」
「夜空から下界を見下ろす二人も気付くように、沢山愛し合おうよ」
「…それは、二人への当て付けか?」
「差し詰め、そんなところ」
「…っとに手前は質悪ィ」

最後、静雄が言葉に合わぬ笑みを口に張り付けたかと思えばそれ以降の言葉は全て互いの咥内へと消えて行った。







当て付け







―――――

気付いたら23時で急いで書いた。
七夕くらいイチャイチャしてればいい。

20110707
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