遥か彼方
聞きたくなかったと言えば本当になる。だけど、聞かなければならなかったことは私だって判っていたんだ。耳を思い切り塞ぎ込んで何も聞こえてこないようにすることは幼児でも出来ることなのに、それをしなかったのは私は判っていたからなんだ。
「レッド、シロガネ山に籠もるらしい。」
「…そう、なんだ」
振り絞って吐き出した言葉は余りにも情けなくって。
「…名前、」
「ありがとう、グリーン」
ちらほらと降り出した雪の中、もう暗いと言うというのにグリーンは私の家まで来てくれた。なのに、私は心配しないでの一言も言えない挙げ句笑みを浮かべることも出来なかった。心配を掛けたく無いというのに、私は何をしているんだろうか。
次第に耐えきれなくなって、視線を地面へと落とせば私の思いとは裏腹にぽとり、ぽとりと水滴が落ちてゆく。
「…大丈夫…か?」
「……っ、う…ん…」
本当は大丈夫じゃないと言うのに今はただただ頷くことしか出来なくて。こんな私嫌いだ。なんて思っても何も変わらなくて仕方ないことなんだけども。
……レッドは強い。私なんて手も届かないくらい遠い人へとなってしまったのだ、今更追い掛けるなんてこと私にはとても無理な話だから。なんで、どうして、私はあの時彼らと共に旅立たなかったのか?後悔ばかりが私を襲った。
もう、何も届かないのだ。
遥か彼方 (20120808)
短いうえに話纏まってない。
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