呑み込んだ言葉
何時だって、私は彼を見ていたんだ。ずっとずっと見ていたんだ。逢って間もないのにこんな事を言ってしまう私は単純だと自分自身でも分かっている。だけど、だけどね?こんな気持ち初めてだから大切にしたい。
「おはようさん!」
「お、おはよう…!」
うわ、喋っちゃった。それだけで今日の私は幸せ気分、単純馬鹿なんだけども幸せで幸せで堪らない私は心の中でガッツポーズを繰り出した。
幸せな気分が私を包み込んで、暖かくなる。何だろう、この気持ち!凄く凄く暖かいんだ。
「あれ、名前ちゃんどないしはったん?」
「えへへ、何でもないよー」
志摩くんが不思議そうに私を見て問うて来た。それがまた嬉しくて堪らない。幸せで幸せで、怖いくらいで何だろう、大袈裟なのかな?にへらーっと笑う私の顔はきっと、今間抜けなんだろう。それでも良いんだ、
この気持ちに気付いたのは随分最近のことだった。ああ、私は志摩くんが好きなんだって気付いたのは。だけど、今にも言ってしまいそうになるその言葉を私は何時も必死で呑み込んでいた。
「あ、あのね志摩くん…」
「ん?」
彼のトレードマークとも言えるピンク色の髪が此方に振り向いた瞬間ふわりと靡いた。優しい笑みに声、私は彼の全部が好きで仕方がない。
詰まってしまう言葉に志摩くんは頭上にハテナマークを浮かべた。が、それも一瞬で彼の目線が私から大きく外れた。
「おはようさん!今日も可愛らしいなァ…!」
「もう、志摩くんは今日も相変わらずだね」
「えー…そう?」
―――ああ、まただ。私はぎゅっと拳を握り締めた。どうして何時も彼は…なんて答えなんて最初から分かりきっていることを考えた。
志摩くんは女の子が好きだ、それは私だって分かっている。それが今では苦しくて堪らない。最初はそんなことなかったのに、私が志摩くんを好きだと分かってから胸が張り裂けそうなほど辛い。
他の子なんて見ないで欲しい喋らないで欲しい。次々に出てくる止まることの無い小さくて大きな欲は私を苦しめる。だけど、そんなこと彼に言えるはずがない。
私が何時も必死に呑み込む言葉なんて、彼は知らない。悲しくて堪らないけれどそれで良いんだと最近思うようになった。
彼に想いは伝えられないけれど、それで良いんだと。今の私は彼を見ているだけで充分なんだ。
呑み込んだ言葉
end (20120321)
意味の分からないお話になってしまいました。
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