嘘で飾り付けました




名前ちゃん、とそれはそれは愛想良く黙っていれば女の子が寄ってくるような笑みを浮かべる奴が私は嫌いだった。何かしら私にベタベタと触れてくるのも嫌いだったけれど、それよりも嫌いだったのがあれだ。


「今日も可愛らしいなァ、出雲ちゃんは」

「……」

奴が誰彼かまわず可愛いだのデートしてだのをまるで息を吐くかのように口にしていたからだ。……今更、だとは思った。奴は入学当時からこんな調子で祓魔塾でも同じだった。


いい加減慣れろ、と自分に言い聞かす日々が続く中奴はそんな私の心境すら気にも止めずに毎日ひたすら女の子を口説いていた。

「…あ、名前ちゃんやん」

「……」

「今日も可愛らしいなァ、ほんまに!」

教室に入れば何時もと同じくへらっと間抜けに笑みを浮かべ誰にでも並べる言葉を口にした。まるで、これは奴の挨拶のような言葉だ。

私が他の子と一緒だと思うのなら、それは大きな間違いだ。私は可愛いだの何だの言われても普通の女の子みたいに頬を染めたり、笑ったりはしない。

「………」

「あっ、名前ちゃん」

入学当時から奴の調子がこのようなものと同じく、私もまた入学当時から生徒の誰一人として口を利いていない。私は此処に馴れ合いをするために来たのではない。祓魔塾で勉強し、立派な祓魔師になるためだろう。こんな所で油を売っているほど私は暇じゃ無いんだ。


「なァ、名前ちゃん?」

なのに、毎日毎日懲りずに私に話し掛ける奴は余程の暇人と見える。適当な椅子に座り奴がいる側では無く窓の外を見上げるように見れば、隣からガラッと椅子を引くような音が鳴った。

嫌な予感しかしない、だけども確認しなくてはいけない。ゆっくりゆっくり、と奴がいた場所へと目線を向ける。私の嫌の予感は的中したのだ。


「……」

「名前ちゃん、今日よろしゅうなァ」

嗚呼、もう私に構うのは止めてくれないか。その笑顔が声が全てが私からしたら見たくもないものなんだ、本当に。何時か私が私じゃなくなるようなそんな感じがしてたまらない。


「…私、あんたのこと大嫌い」


だから、私は何度でも嘘を吐いて飾り付けてやるんだよ。


嘘で飾り付けてました

end (20120305)

初の短編は志摩くんにしてみましたが見ての通りまだキャラを掴めていません。シリアスなお話が書きやすい私からしたら志摩くんは一番難しかったりします。どちらかと言えば志摩くんはギャグとかですからね、取り敢えず早くキャラを掴めるよう頑張ります。



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