これが本望だと言うのなら




ふわり、とほんの僅かに笑ったサスケは私を抱き寄せた。サスケが笑うだなんていったい何年ぶりだろうと頭の中で考える。

一族が殺されたあの日を境に全く笑わなくなった。ただひたすら強さを求めて兄を殺すためだけに生きてきたと言っても過言ではなかった。もうこれから先二度と出来る事がないような大切な繋がりさえも断ち切りただ復讐のために強さを求めたサスケ。

…けどもやっとたどり着いた先は更なる復讐の心を燃えさせた。やっと復讐が成し遂げたと思った矢先に聞かされた兄の真実と本音、全てはサスケに万華鏡の力を授ける戦いでもあった。それを聞かされたサスケの復讐心は途絶える事なくそれを仕向けた自分の里に復讐心を向けた。もう笑う事さえも皆無だと思っていた私からしたらとても吃驚するものだった。何時もの冷たい感じじゃなくて昔のサスケの感じで、そっと笑みを浮かべ抱き寄せたサスケに私は嬉しくて仕方なかった。



だから、ゆっくり私はサスケを抱き締め返した。




「………」
「…え」

自分より背の高いサスケを見上げる。問いかけるように口を開くがうまく口を開けなかった。その変わりに私とサスケの腹の所くらいからぐちゃりと気持ち悪い音が響きその後からはチリチリと千鳥の音が響く。



…嗚呼、刺されたんだと気付いた頃にはバタンと身体は虚しくも地へと倒れていた。


「…もう、お前は用済みだ」
「………」

先程とは打って変わったような表情を浮かべるサスケ。今のサスケには殺意しか感じられなかった。
倒れた身体を起こそうと力を入れるもののぴくりとも動かずただ地にからサスケを見上げた。

「…用済み、なの?」
「ああ、」
「…価値は、ないの?」
「ああ、」


「……サスケにとって必要ないのなら、このまま殺して」
「………」

バチリ、とサスケの手から火花が散る。嗚呼、此処で私は大切な人に殺されるんだと小さな笑みを浮かべた。嬉しいのか悲しいのかと聞かれれば私は嬉しい。サスケの為のこの命、サスケに散らされるならそれはもう本望だ。

「…じゃあな、」
「……ありがとう」



これが本望だと言うのなら

end




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