過ぎた熱をなぞる
バサリ、と私は乱暴に暁の証である黒い衣を脱ぎ捨ててメンバーが普段集まる部屋のソファーにうつ伏せで寝転がった。……長い任務に就いていた私はようやく終わりやっとの思いでアジトに着けた。今この状況で他のメンバーにでも見られたら間違いなく何かされる事は目に見えているが今は夜中の3時。皆寝ているだろう、
「……ねむ、たい」
それに流石にもう身体は余りの疲れに動けなかった。今までの疲労が睡魔に変わり私を襲う。それを振り払う事も出来ない自分はゆっくりと意識を手放した。
* * * *
そっ、と何かが私の頭を撫でたのがぼんやりした意識の中わかった。ゆっくりとしか身体を動かせずほんの少し手を動かすとぴたりと頭を撫でていたのが止まった。
「…起きたのか?」
聞こえてきたのはぼんやりした意識の中でもわかる人で、その声が聞こえた途端反射的に肩を揺らしてしまう。この独特な声はイタチさんだ。
「すまない起こしてしまった」
「い…いえ、大丈夫です」
「そうか、」
いつものイタチさんからは考えきれない声で、いつもなら短い言葉しか発さないイタチさんが柔らかい声でしかも言葉が多いとなると吃驚する。それに加え
「………あ、あのー」
「…どうした?」
「…あ、頭」
優しく私の頭を撫でるイタチさんに病気じゃないのか、と問いたい程ドキドキと心臓が鳴る。この気持ちが何なのか、気付きたくて気付きたくない複雑な気持ち
「…余りにも気持ち良さそうに寝ているんでな、つい」
「そんな気持ち良さそうでしたか?」
ああ、凄く。そう口にしたイタチさんはまたゆっくりと私の頭を撫でだした。始めは緊張の余り固まるがしだいにそれは消えて無くなりまたうつらうつら、と意識が失い掛けていたその時だった
「…名前、」
私の名前を呼んだかと思うとそっ、とイタチさんの手が私の頬に触れた。だが身体は疲労か睡魔なのか動かない。
「…(どんだけ疲れたんだよ、私は)」
ただぼーっとしか出来ない私は私の頬に手を添えるイタチさんを見る。赤い目に整った顔は女の私ですら見惚れるようなもので、
「…イ、タチさん」
ようやく発した言葉はあまりにも情けなくて、けどそれすらもイタチさんは薄く笑みを浮かべていた。
「…す、…きです」
自分でも何を言ってるのかもわからなくて、それだけを口にすると私はゆっくり意識を手放した。頬に添われた温もりを感じて。
過ぎた熱をなぞる
end
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