レールに沿った物語





手慣れた手付きで自分は目の前を歩く男へとクナイを突き付けた。首筋へとクナイを突き付けられた男はぴたり、と足を止める。――洞窟内が一瞬にして静まり返った。だが、それは数秒であってすぐさま男は呆れたように口を開いたのだ。突き付けたクナイなど見えていないかのように悠々と、



「…何の真似だ、名前」

冗談は後にしてくれ、と言いたげな様子で男、マダラと名乗るこいつは言った。だが、生憎冗談でも無ければふざけている訳でもない私は奴の首筋からクナイを外すということなどしない。寧ろこの時を瞬間を待ちわびた私にとってはこれほどもない喜ばしいことだった。自然と口元が緩くなる、


「…正気か?」

「正気さ、お前を此処で殺してやる」

「今まで俺に従って来たお前が、か?」

「そんなもの、形だけに決まっているだろ?」

ぎゅっとクナイを握り締めれば首筋に少し食い込んだ、流れた血液は赤かった。それに気を向けることもなくマダラはただ一言"そうか、"と口にした。痛覚など感じていないかのような態度に気持ち悪さを感じる。確かに血液が流れるということは生きているということだ。なのに、こいつは生きているようでそれを偽装しまるで、死んでいるような――









「油断は禁物だ、」


「―――っ、」


それは全て一瞬だった。

突き付けてたクナイは知らず内に奴が握り締め、此方に向けた身体はすぐさま腕を私の首元のまで伸ばしていた。仮面から覗く赤い写輪眼は相変わらずの不気味さを醸し出している。首元に伸ばされた腕をギリギリで避けて、その赤い眼に飲み込まれそうな身体をどうにか現実へと留めることが成功した。が、もう後戻りも出来るはずがない。


「…運が良かったな」

嗤いが籠もったような声でマダラが言い放つ。此処でもしも奴の腕が私の首元を掴んでいたとしたら、きっと私は一生この目で太陽すらも拝めることが出来なかっただろう。今度こそ本当に奴の操り人形として一生を終えていただろう、と想像するだけで背筋が凍った。


「お前の言いなりは卒業したんだよ。」

「ほう、」

「此処まではきっとお前の筋書き通りだったはず、だから」


精一杯の余裕を見せて、笑みを浮かべる。冷や汗が背を流れるのが感じられた、怖いだなんて最初から感じていたことなんだ。これで全てが終わるかもしるない、そう考えたら進むことが出来なくなってしまいそうな時もあった。恐ろしくて、どうしてこんなことをしているのかと自分を問いただしたこともあった。だけど、


「此処からお前のその筋書き通りの物語、とことんまで滅茶苦茶にしてやる」


誓ったんだ。といつ尽きるかも分からない希望で私は全てを賭けてみせた。


レールに沿った物語

end (20121117)




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