ルリハコベ




詰まる息に手をばたつかせ伸ばした、はずなのにその手は何も掴めない。

何でも良い、何かを掴みたかったが期待も虚しくただ宙を掴む。光も景色も今は何も見えなくて、


私の中で恐怖心が募り溢れでて最後の一思いで私は手を伸ばせばがしりと力強く誰かの手に握られ勢い良く引き上げられたその身体は意外にも軽くその手に引かれた。




「………な、に…」


発せられた言葉は上手く繋がらなかった。

やっと引き上げられたと思えば途端ぎゅっと何かに抱き締められて、ふわりと酷く懐かしい匂いが私の鼻を掠めた。

込み上げてくる感情を抑えつけることなんて出来ずに私は抱き締め返して何故か懐かしく感じられたその名を口にする、



「……イ、タチ」

どうしてこうも全てが懐かしく感じるんだろう。こうしてイタチの名前を呼ぶのも彼の匂いも温もりもどうして…こんなにも酷く懐かしいのか、


分かっていながらも私は分からないふりをする



「…名前、」

「…ごめんね、イタチ」

己から発せられた言葉は謝罪で、それに謝らないでくれなんて珍しくイタチは肩を震わせていた。

それをまるで子供をあやすようにゆっくりと彼の頭を撫でれば首もとに顔を埋める彼は本当に子供のようで、



「…誕生日だもんね、」

「……」

「おめでとう、イタチ」

「…ありがとう」



生まれてきてくれて私と出逢ってくれてありがとう。

やっと顔を上げたイタチに笑みを浮かべればうっすらと笑みを浮かべたイタチ、あの頃と比べなくともとても大人になっていた。

知らず内に合わせた手をゆっくりと握り締める。さらさらと砂のように散りゆく身体、私はこの残された時間を一杯一杯まで彼を感じていたくて、ゆっくりと彼に口付けた。



「…ありがとう、」


言いたいことは一杯あった。だけど、それを口にしなくとも彼なら…イタチなら私が言いたいこと、分かってくれているなんて勝手な思い込みをする。いや、でも――

「…また、逢おう」


約束ね、と消えゆく小指を彼の小指と絡めた。


――これが彼と私の二度目の約束だ。


ルリハコベ
花言葉は約束

end

****

改めて誕生日おめでとうございます!折角の兄さんの誕生日なのにこのグダグダ感はなんだって感じですよね…。一応言うと夢主は死んでますが何らかの方法でイタチとの再会を果たしまたしても逢おうと約束を交わした。この再会もまた約束していたものです。ルリハコベ、と言う花は兄さんの誕生日6月9日の誕生花でして(私が調べただけですので本当に合っているかは断固出来ませんが)お題とさせて頂きました。




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