神などいないと吐き捨てた




わかっていたのだ、彼の気持ちは此処には無いと。私が切れば簡単に離れてしまう張り詰めた糸を私は必死に繋ぎ止めていたのだと。わかっている、わかっているんだ…。

「ギン、」
「どないしたん…?」

不思議そうに私の顔を伺うこの瞬間も表情も気持ちも何もかも今此処にあると見せかけては何もない。彼の気持ちも時間も表情もみんなあの人にある、私にくれるものなんて彼にはない。

「ごめんね、ギン」

わかっているのに離れられない、何時も離れようとして結局は失敗しあなたを利用してしまう私はなんて最低なのだろうか。彼があの人を求めていることもあの人が彼を求めていることもわかりきっていると言うのに、知らないふりをして彼に私は寄り添うのだ。

「ほんま、どないしたん?」

彼の胸に顔を埋めると彼はゆっくりと私の頭を撫でた。離れたくない、離したくないと自分でもわからないくらいの気持ちが溢れ出してくる。嗚呼、私は彼が好きだ。例え彼の気持ちが此処に無くとも、私は卑怯者だ。

「名前?」
「何処にも行かないで、ギン」

「………当たり前やないの、」

ごめんね、ギン。あなたがあの人の傍に居たいと思っていることくらい私にはわかっているの。だけど私はあなたを引き止めるの、私はあなた無しじゃ生きてはゆけない。ごめんね、ごめんね、謝っても謝っても埋められない罪悪感がうねり優越感が私を満たす。


嗚呼、私は――――――























最低な人ね、いやもう人でもないのかもしれない。

神などいないと吐き捨てた

end

(20110912)




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