愛しさと言うものは





私はあの隊長の何を考えているのかわからないあの笑みが不思議だった。だから、必要以上に隊長を見つめる。まるで穴が空くほど見つめる。けども話し掛けた事はなかった、隊長に話し掛けるなんて他の隊の隊員が出来る筈もない。それ以前に私は隊長に話し掛ける勇気など持ち合わせてはいないのだ。

「なあ、名前ちゃん」
「…市丸隊長、」

だから隊長から話し掛けてくれるなんて思ってもいなかった。話し掛けて来た隊長は私を見るなり何時もの笑みが深くなったような気がした。

「僕に用があるんちゃうの?」
「………」

確かに私は隊長に用があったが生憎私は隊長に話し掛ける勇気などないから用があると隊長に話し掛けようと思わなかったが良いチャンスだ、

「…あの、これ」

お誕生日おめでとう御座います、と口を開きながら渡した小さな包み紙を受け取った市丸隊長はあろう事か突如私を力一杯抱き締めた。

「…なななな、っ」
「ありがとうなー、好きやで」

赤くなる私を知ってか知らずか隊長は軽々と好きだと口にした、それにも赤くなりながら私は慌てて隊長から離れる。よりにも此処は普通の廊下だ。誰も通っていないはいないが見られては面倒なことになる。

「…あれ?嫌やった?」
「い、いえ。そう言う訳じゃ」

「…僕の事嫌いなん?」

違う、と口にしようとした言葉の前に隊長が何時もは見せないきょとんとした表情から泣きそうな表情になり慌てて口を開く。

「いえ、寧ろ好きなんです」

……あ、と自分が言った言葉に気付き声を漏らす。当の隊長は僕もやでー!と半分叫びながらぎゅううう、と抱き締められ身体が熱くなるのが感じられる。

離そうと試みるががっちりと腰に回された腕は離れない。挙げ句首筋に顔を埋められ視界の端に銀色の髪が見える。

「あああ、あの市丸隊長…」

此処廊下ですけど、と声を振り絞りながら言うが聞いてはいない。そして抱き締めるだけでは足りないのかゆっくりと隊長の手が私の腰を撫でる。

「昼間から何してんですか!」
「良いやん、ちょっとくらい」

初めて話し掛けたような相手に普通突然抱き付くだろうか。隊長の有り得なさに呆れる。だが隊長を毎回見ていた私からすれば嬉しいものだが何故か素直には喜べない。

「隊長は誰に構わず抱き締めたりするのですか?」

「僕は名前ちゃんだけや」
「初めて話し掛けた相手ですよ?」

そう口を開くとクスクスと笑いながら隊長はゆっくりと私の耳元に口を近付けて口を開いた。

「僕かて、前から名前ちゃんの事見てたんや」


かああ、と熱くなる顔を見てまたクスクスと笑う隊長に私は自らの顔を隊長の胸へと埋めた。


愛しさというものとは

end

市丸隊長誕生おめでとう御座います\(^o^)/




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