自己犠牲はお互い様
現世の雨は尸魂界と同じように私を罪を洗い流すかのように降り注ぐ。されど罪は罰は流れ落ちはしない。
「…く、…そッ…」
「………」
動けば傷が広がることすらわかっていると言うのに、ふと横に目をやり這いつくばりながらもこちらを睨む死神を目にする。
恐れたような表情をする者も居れば怒りで今にも飛び付いてきそうな程の表情をする者もいる。
「……このっォオ!!!」
「……!」
ザシュ、と痛々しい音が鳴り響き左肩にピリピリとした痛みが走る。斬られたとわかるまで時間はそう掛からない。
斬られた衝動で後ろに尻餅を着く。それと同時に前の死神はまるで最後の力を振り絞ったように立ち上がり刀を構える。
「………」
「……死ねっ…!」
勢い良く駆け出した死神は真っ直ぐ刀を私に向けた。此処で死ぬのか、そう考えれば自然に恐怖はなかった。
ゆっくり、目を閉じる。次目を開けた時は何処に居るのだろうか、と考えていたその瞬間ぐちり、と何かが突き刺さったような音が鳴り響く。
自分ではない、じゃあ一体誰だと言うのだ。ゆっくり、ゆっくりと目を開くと見えたのは同じような白い服を身にまとった銀髪の持ち主。
「こんな所で死ぬ気やったんかいな?名前」
「……市丸、ギン」
にやり、と何時も絶やさない笑みを向けられる。彼の持つ斬魄刀は長く伸び先ほどの死神を貫いていた。伝う赤い血液はぽたりぽたり、と地に落ちる。
「…き、さま…!」
突然の攻撃に驚いたのだろう、目を見開きギン睨むが胸を貫かれもう長くはない筈だ。口からは赤い血が溢れ流れる。その様子を見ていたギンだったが飽きたかのように放り投げた。力無く地に身体を投げつけられるがまま横たわる死神を横目で見る。
「あーあ、死んでしもたわ」
「………」
「ほんま、呆気ないなァ…」
くつくつ、と笑みを深めるギンに声を掛ける。「どないしたん?」と返され思った事を口にする。「何故そんなに悲しい顔をするのか」と、初めはきょとんとした彼だったが直ぐに何時ものあの笑みに戻り「僕、そないな顔してた?」とまるで茶化したように口にする。
「思いっきりしてたから、」
「えー、ほんまに?」
「うん、かなりしてた」
「ほんなら、名前もやで」
「………え?」
彼の言葉に拍子抜けする。いつ何処で私は悲しい顔をしたのだろうか、自分的には無表情でやってのけたと思いきっていた私だから心底驚く。
「………私、が?」
「そうやで、」
「有り得ない、藍染隊長も気付いてないのに」
「それやったら、僕もなんやけどな」
苦笑いを少し浮かべた彼はそっと私の頬に手を当てた。そしてゆっくりと耳元まで口元を持ってゆき小さく口にした。
「……お互いさま、やね」
自己犠牲はお互い様
end
(20110828)
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