たぶんもう帰らない






暗くなりかけている空をただただ私は見つめた。

少し肌寒くもう夏の終盤だと感じられるものだった。……辺りは少しずつ少しずつと暗くなってゆく中ぽつり、と私は屋根に腰掛けただただ空を見上げていた。

「どないしたん?」

すっかり暗くなった空に静かなこの場所に聞き慣れた声が響いた。――――市丸隊長はその何を考えている分からない表情で屋根にいる私を下から見上げていた。

「…すみません、」

慌てて降りようと腰を起こそうとしたが何故か止められる。不思議に思った瞬間軽々と屋根に登った市丸隊長が私の横へと腰を下ろした。

「あー、寒なってきたなァ」
「そうですね…」

寒い、と口にした市丸隊長は空へと目を移した。それに続き私も空へと目を向ける、空はもう真っ暗だがその代わりのようにキラキラと辺りいっぱいに星が浮かんでいた。












「ギンっ…!」

乱菊さんの声がやけに響く。目の前の光景に私はただ突っ立ってることしか出来なかった。


市丸隊長が藍染隊長の崩玉を奪ったのだ、だがもう既に時遅しと言うのか崩玉は姿を消し藍染隊長へと戻っていた。

勢い良く斬られた市丸隊長は身体を地に倒し駆け寄って泣いている乱菊さん。

「…市丸隊長、」

ぽつり、と声を発する。何時もならした返事が返ってこない。嗚呼、そうか彼は……




















「……市丸、隊長…」

  死んでしまったのか。



気付いたら身体が勝手に動いていた。まるで自分の身体が何かに乗っ取られたかのように私は斬魄刀を手に持ち走り出した。

「…名前、止めなさい!」
「………」

乱菊さんの声が聴こえるのにも関わらず私は藍染へと刀を振るう。

カキンッ、と刀が交わる音が響きギチギチと音を鳴らす。今の私に藍染はにやりと妖しく笑い私へと手を伸ばす、が私は素早く後ろへ下がった。

「………、」
「…変わった霊圧だね、まさか君がそんなものを持っていたなんて」


「とんだ誤算だよ、」と楽しそうに笑みを浮かべる藍染に私は刀の先を真っ直ぐ藍染へと向ける。

「…ギンが愛しかったかい?」
「……煩い、」

「君は大切なものを失うことによりその力を解放する。」

嗚呼、どうして彼は死ななければならないのか。わかっていた筈だった、彼のあの張り詰めた笑みに全てが隠されていたことも。彼が行ったことは彼女のためのことだと言うことも全てすべて……

「…私は許さない」
「………」

「…例え私の身が滅びようともお前だけは…殺す」


走り出した私は構えた刀に力を込める。彼との思い出が頭を過ぎる、涙なんて遠に通り越し泣けなかった。


たぶんもう帰らない

end

20111003




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