「…………はあ」


何もかもが耳に入らずただひたすらあの出来事ばかりが頭の中を回り続ける。きっと気にし過ぎだと自らを抑えようにも抑える事は出来ない


「…あれは、一体」

ぽつり、と1人暗い部屋で呟く。あの化け物に黒い着物の少女、パズルのようにぐちゃぐちゃだがちゃんとしたパーツがある。




の果て







「やっぱ、一護にこの事話した方が良いな」

ぎしり、とベッドが鳴り立ち上がる。このモヤモヤは話してみる価値がある、自室を出た俺は一護の部屋へと向かったが、



「……ん、騒がしいな」


何故か一護の部屋は1人だと言うのに騒がしい。一応ノックしてがちゃり、と扉を開く。



「一護、あの……さ」





……まさかとは思ったがそのまさかで部屋には一護だけでは無く今日見たあの黒い着物の少女が居た。


「……一護、この女の子は」

「何、貴様も私が見えるのか!?」

突然の登場にあたふたと焦る一護と何故か驚く少女。一応一護に尋ねてみるものの少女は窓をすり抜け此処へ入ってきたらしい

「………で、君は一体」

「死神、だ!」

「…………死神?」

死神とはどう言う事なのか、まあ人間では一先ず考えにくい。だが死神と言うのは…

「ん?貴様、変わった霊圧を持っているな」

「……変わった、霊圧?」

ぐい、と顔を引っ張られぺたぺたと好き勝手に触られる。一見人間のようだが雰囲気と言うべきなのか、纏うオーラが違うように思える。












* * * *



「…そうか、つまりあんたは死神で、」

先程の自らを死神となのる少女は簡単に説明をし出した。いきなりで物事を理解し難いがそれを一護はまとめている。少女は一護のまとめにこくりと頷いている。

「その尸魂界とか言う所から遙々悪霊退治にやって来たって訳か、って事はさっきの化け物がその悪霊であの女の子を襲ったと……」

こくりこくりと頷く少女だが正直信じがたい話だ。見事一護も信じられないようだが何か昼間と同じ胸のモヤモヤが大きくなる。まるでこれ以上この事には関わるな、と言っているように。

「縛道の一 塞!」

「……うぐ?!!」


「………一護!!?」


突如聞こえた少女の声に一護を見ると何かに縛られたようにバタンと倒れてしまった。何が起こっているのかわからない。

「…っ、な、何しやがった!?」

「……動けまい。これは鬼道と言ってな、死神にしか使えぬ高尚な呪術だ」

「……鬼、道?」

もがこうにも何かに縛られもがけないのか悔しそうに少女を睨むが全くもって効果無く挙げ句少女は一護より幼いように見えて10倍は生きているらしい。

「…本来なら消してやりたいが一応指令外の人間に手をかけてはならぬ事になっているのでな、感謝しろ糞餓鬼」

「…っ、この野郎!」

消してやりたい、とはこの子も可愛らしいが内面一護に似すぎている。

「まあ、一護諦めろよ」

「お前も見てねぇで助けろ!」


「…後それから、」

かちゃり、と不気味な音を立てて少女は刀を抜き出した。まさか斬ろうって気ではないだろう、指令外の人間だしな

一護は振り下ろされる刀に目を瞑るが実際は一護では無く一護に憑いていた男に刀の持つべき場所の柄を額に付ける。

「い、嫌です…私は地獄へは行きたくない!!」

「…臆するな、お主の向かう先は地獄ではない。尸魂界だ…地獄と違って気易い所だ」

少女はそう言うと額から柄を離すと憑いていた男は安心したように消えて行った。



「……後は、」

「………え、」

消えて行くのを見送った後少女は此方に歩を進め俺に憑いていた二体の霊にも同じ事をし二体ともゆっくりと消えていった


「どうなったんだ、今の奴ら」

「…尸魂界、とか言うのに行ったんだろう」


「お主が言った通り尸魂界に送ったのだ、貴様等の言葉では成仏と言ったかな…死神の仕事の内の1つだ。貴様のような短慮な餓鬼にも篤信が行くよう優しく遣いしてある」


そこまで言うと何故かスケッチブックを取り出して説明し出したがお世辞でも上手いとは言えない絵が出てきた。



……だがそれを口にする気はさらさらない。理由は一護がやられたあのマジックペンだ



「我々、死神の仕事は二つ。一つは整を先の魂葬で尸魂界に導く事、そして二つ目が虚を斬り倒し成化する事だ」

「…なら、なんであの虚はあの女の子狙うんだ?」

「……それは分からぬ、我々とて奴らの生態を完全に把握している訳はないのだ」

「……そう、か」



―――――ドクン、と胸を貫くような痛みを感じそっと窓から外を見る。良くは分からないが何かが近付いてくると言う事だけは分かる。霊を感知した訳ではなくこの少女を感知した訳でもない。何か、何かどす黒いものが、












――――――近付いてくる。


end