「悠輝…走れるか?」

ルキアの言葉に小さく「…ああ、」と返事しながら頷くとルキアは頭から血を流しながら立ち上がる。チャドを此処から動かしてはいけない。そして俺とルキアはこいつからチャドを離し逃げ回る。


偽りの



「此処を動くなよ、チャド!」
「奴は貴様が一歩でも動けば鳥籠を爆破するつもりだ…!」

今の言葉に目を見開くチャド、ルキアは取りあえずチャドからこいつらを離すつもりだがあの鳥籠に乗っている奴は離せないだろう、チャドはルキアと俺の心配をするが大丈夫だと口にしルキアと目を合わせた瞬間走り出した。




「…ルキア大丈夫か!?」
「ああ、大丈夫だ!」

走り出したのは良いが追いかけてくる無数のあの蛭を出す奴は意外に早くあっと言う間に両際に付かれる。

「……悠輝!」
「わかってる、!」

それを間一髪で飛び避けるが避けた場所に二匹が姿を現す。

「……な、っ!!」

勢い良く吐き出された蛭はルキアと俺の身体へと付く。慌てて外そうとするがやはり離れずきつく張り付く。

「ほら、かぶったなァ!!!」
「「――――――ッ!」」

蛭が付いたのに気を取られ後ろにいた虚がわからなかった。容赦なく奴は舌を鳴らし蛭は爆発する。

「―――ゔあああっ!!」

蛭が爆発したところに激痛が走り身体を抱える。たらり、と額から流れてきた血に顔を歪めるが止まっている事も出来ず走り出す。

「ヒャッハハハハ!!良いねェ、その血だらけで逃げる姿!!」

「…………ゔっ」

ポタポタ、と互いに血を流しながら必死で走る。後ろから虚の声を聞きながら、

「たまんねェ…なァッ!!」

放り投げられたあの蛭を出す奴はルキア目掛け飛んでゆく。当のルキアは気付いておらず危機一髪でルキアを押す。

「――――うあ゙っ!!!」
「悠輝ッ!!?」

バシャッ!!と勢い良く被ったそれはやはり気味が悪い紫色をした蛭。ルキアが剥がしに掛かろうと近寄るがその前に虚が舌を鳴らす。

「―――ゔッ!!」
「……くそッ!!」

蛭が爆発しどうにか激痛に耐えているとルキアは俺の手を引き走り出してくれる。

「ほらほらほらァ、どこまで逃げる気だァ!?反撃してきても良いんだぜェ!?死神さんよォ!!?」

「…ルキア、」
「…ああ、わかっている」

逃げ回る俺たちがそんなに面白いのか虚は豪快に笑いながら追いかけてくるが1つの霊圧にルキアと俺は立ち止まる。

その事に不満の様子な虚は逃げろと口にするがルキアが口を開く。

「反撃してきても良いと言ったな。ならば、その言葉に甘えさせて貰うぞ!」

ルキアの言葉に疑問を向けようとした虚が口を開こうとした途端、虚の頭が何かに勢い良く踏みつけられる。

「なあ、一護…!」

にやりと笑ったルキアに虚の頭を踏みつけた当の人物、一護は呆れた顔をした。

「なーにが"なあ、一護!"だ、お前等俺に心配されるようなヘマはしないんじゃなかったのか?」

「戯け、そう言う科白は少しでも心配した人間が言うものだ!」

ルキアの言葉に呆れながらも納得した一護だが虚は気に入らないのかキレだしたが何ともない一護はにやりと笑う。

「黒崎一護、15歳!現在死神業代行!!…追いかけっこがしてぇんなら、相手が違うんじゃねぇか?」

「死神代行だと?…くそ、こんな事なら端っからテメェの方を狙っとくべきだったなァ!!」


虚の言葉の後には沢山のあの爆発物を出す奴が一気に蛭を出し爆発してくる。俺は掛からない場所へと非難しルキアは一護を死神の姿へとしそれを避け虚を斬りつける。

「…成る程な、それでああやって足止めさせて、無抵抗なお前等を攻撃してたんだな、……クソヤローだな。テメェは」

「…だがテメェはこれからそのクソヤローに喰われるんだぜ!」


悪そびれもない虚は一護へと攻撃を仕掛ける。俺はルキアと同じ電柱の後ろで一護と虚の戦いを見守るが後ろから近付いてきた気配に振り向く。

「……一護!?…ど、どうした、一護!?」

「チャド、」

後ろから来たチャドは大切そうに鳥籠を持っていた、どうやら一護に片付けて貰っていたらしい。チャドは倒れている抜け殻の一護を見ては驚く。

「丁度良い、鸚哥とそいつを何処か安全な所に隠してくれ」

ルキアもチャドに気がつき一護と鸚哥を隠してくれと頼むが一護が倒れているのにチャドが心配する。

「大丈夫だ、チャド」
「………悠輝、」

「案ずるな、あいつなら今戦っている最中だ!」

ルキアの言葉に全ては納得出来ていないチャドだがわかった、と口を開き一護を抱えて安全な場へと走ってゆく。それに続きルキアも行くが俺は残ることにした。取りあえずチャドとルキアの居場所は俺がわかるとして、一護と虚との戦いだ。


「はああああッ!」

一護は素早い動きであの爆発物を吐く奴を斬りかかる。爆発物を吐く前に斬るため大丈夫だと思うが斬られた奴からはあの蛭が落ちている、

「良い動きだ、だがな斬られた傷から溢れ出た蛭も爆弾であることに変わりはねェんだぜ!?」

「――――一護!」
「わかってる、!」

大量の蛭が爆発し煙が漂う。殺ったと思い込んでいる虚だが一護の霊圧はしっかりある、

案の定ぶわ、と煙から飛び出して来た一護は素早く虚の首に刀を押し当てるが押し当てただけで斬ってはいない。

「一つ。てめーに訊きたい事がある、…あの鸚哥に入ってるガキの親を殺したのはてめぇか!!?」

「……な、」

一護から出てきた言葉に息が詰まる、嘘であって欲しいと願うがそんな願いは儚く散る。

「…そうだよ、」
「「―――――――!」」

「あのガキの母親は俺が殺したのさ、俺がまだ生きてた頃の話さ…」

そうやって口を開いた虚は全てを語り出した。面白そうに思い出しながらゆっくりと、


虚が生きていた頃、奴は連続殺人犯であり沢山の罪もない人を殺していた。そしてその標的となった最後の1人はあの鸚哥に入っている子供の母親で、だが奴はあの鸚哥の子供に靴ひもを掴まれベランダから転倒しそして死んだ。

だが、奴はその子供の魂を抜き鸚哥に入れそして"三ヶ月、そのままの姿で逃げ回れ。それが出来たらママを生き返させてやる"と。

そんな事出来る筈もないのに、あの子供は純粋さ故にこいつの言葉を信じ逃げ回るがあの子供を守ろうとした人間を片っ端から殺され止めたいと叫ぶ、だが

「…しかし、此処で決め台詞さ。


"ママが助けを待ってるぜェ!?"」

「―――――――ッ!」

……残酷すぎた、人として可笑しいと感じる。何故、自分と同じ人間を殺し笑っていられるのか。俺には理解出来なかった。もやはこいつは人ではない、悪魔だ。

「動揺してんじゃねぇよ!スキだらけだぜェ!?」

「……一護、!」

不意を突かれた一護はあの爆発物の蛭を被る。だが爆発する前に一護は走り出し勢いよく虚の口目掛け拳を叩きつけ堅い仮面には穴が開く。

「ほら、返すぜ。この爆弾…」

「…あ゙っ、おああ゙…」

舌を鳴らす事も出来ない虚は抵抗するがその前に一護は勢い良く虚の舌を引きちぎる。

そして、斬りつけ虚が消えかかった瞬間その後ろには大きな門が現れた。骸骨のようなものが二体ある大きな門、

驚く俺たちにルキアは一言地獄、と口にする。その言葉に息を呑む、

「斬魄刀で罪を洗い流す事が出来るのは虚になってからの罪だけ。生前大きな罪を犯した虚は、地獄の門が開かれる」

勢い良く開いた門は余りにも圧倒的で、虚は叫び声を上げるが後ろからでかい刀で一突きされ門が閉まりそして砕け散った。

あまりの事にそこから少し動けなかった。














* * * *

「…どうだ?」
「…残念だが、因果の鎖は既に断ち切られ跡形もない。もう体に戻ることは不可能だ」

ルキアは悔しそうに口にした言葉に鸚哥は俯く。それを見てルキアは慌てて尸魂界は良い所だと励ますが俯いたままの鸚哥に俺はゆっくり駆け寄る。

「…向こうに行けばママに会えるかもしれない」

「……!」

「ママを生き返らせる事は出来ないけど、今の君が向こうに行くとしたら、きっとママが居るよ」

「……悠輝、」

鸚哥に憑いた子供はチャドにお礼を言うと一護に魂葬されていった。きっと、あの子はママに会える。俺たちは空に舞う黒蝶々を見上げながら笑みを浮かべた。


end

(20110912)