「あ、あの…どうしたの?朽木さんも雪伊さんも…」

「「………え、」」

気付いた時には井上さんが心配そうに此方を見ていた時で。まさか自分までそんな複雑そうに痣を見ていたのか?


傷付けた



「そんなに二人共怖い顔して」
「…そ、そうか?」

井上さんは不安そうに眉を寄せ此方を見る。それを目にし慌てて何でもないと口にすると少し不安だったが普通の顔へと戻った。

「…お、お大事に!」
「ありがとう…!」

にこり、と笑った井上さんに少々焦りながら口を開いたルキアに端で苦笑いを送っていると一護が送ろうか?と声を掛ける。がしかし、大丈夫と言い張る井上さん。焦りがまるわかりだ、

「…じゃあ、俺が送るわ」

「…え、雪伊さんが…?」
「悠輝が、かよ?」

仕方ないと名乗り出たのに井上さんと一護は吃驚したようでかなり失礼だ。その吃驚したリアクションを無視し良いか?と井上さんに問うと小さくたがこくりと頷いてくれた。

「何で悠輝は良くて俺は駄目なんだよ、」

「…え、えー…と…」
「そんなもん、お前が怖いからに決まってるだろ?」

「…な、悠輝!てめぇ…!」
「口の悪さも怖い感じにしてんだよ、馬鹿」

べー、とまるで小さな子供のように舌を出して一護を挑発すると簡単にその挑発に乗った一護は俺を捕まえるべく此方に向かって伸ばしてくる手をひらりとかわす。勿論井上さんの腕を持ちながら。

そのままかわした勢いで横断歩道を渡り一護に送ってくるわ、と口にすると渋々ながら返事を返してきてくれた。

それを確認し俺は井上さんに行こうか、と先を指差しながら言った。

「う、うん!」

返事は良いが何故か葱を前に持ちながら歩き出す井上さん、手にも力が入っているのだろう、葱がギシギシと鳴っていて今にも折れそうだった。






* * * * *


「…ありがとう!雪伊さん」
「いえいえ、」

あれからたわいもない話をしていたらあっと言う間に井上さん宅へ着いた。玄関まで送るとお茶を出すと言われたが我が家は面倒な門限があったりするから又今度と口を開く。

「わかった、又来てね!」
「…ああ、又来るな」

にっこり、と笑い歩き出した俺の姿が消えるまで井上さんは手を振ってくれた。

それを照れくさいながらも少し手を振り返し歩き出したがあることを思い出し慌てて走り出す。



「……はあ、はあっ」

やっと我が家の玄関前に着き上がった息を整えようと必死で呼吸し、腕時計を目にする。良かった、まだ後五分ある…

「…ただいま、」
「悠輝ちゃーんッ!!!!」


玄関のドアを開ければ満面笑顔の一心さんが見えて咄嗟にドカッと一発足蹴りを喰らわせると相当痛かったのか、唸りながら腹を抱え込む一心さん。

「…大丈夫ですか、一心さん」
「悠輝ちゃ…、棒読…み」


棒読み、と口にした一心さんだったが直ぐに意識を失った。要は失神と言うことか、と納得し鞄を持ち直しながら少し睡眠する為に自分の部屋がある二階へと歩を進めた。











* * * * *


「ねえ、お姉ちゃーん」
「……ん、遊…子か…?」

ゆさりゆさり、と身体を揺らされうっすらと意識が戻る。眠たい目をこすり聞き慣れた声に返事する。

「私のワンピースとパジャマ知らない?」
「…ワンピースとパジャマ?」

どうやら遊子のワンピースとパジャマが無くなったらしいようでそれを今探しているみたいだ。だが生憎遊子が着るワンピースやパジャマは勿論着れないしワンピースなんてまず着ない。

「…悪いけど知らないなあ、」


「…そっか…、お兄ちゃんにも聞いたんだけど知らないらしくて。それにお兄ちゃん高校入ってから冷たくなったよね」

はあ、と短くため息を吐いたかと思えばむっ、と頬を膨らませ拗ねたように怒ると部屋から出て行った遊子を見送り重い腰を上げる。向かう先は一護の部屋だ。





「おーい、一護?」
「なんだよ、悠輝か…」

ガチャリ、と開いた扉から顔を出すとびくりと肩を揺らした一護だったが俺だとわかると呆れたような表情へと変わる。

「遊子が服探してたろ?」
「あー…そうだったな、」
「一護、知らないのか?」
「…知らんわ!」

ふん、とベッドの上で伸び伸びと漫画を読む一護。確かに冷たくなったような、なってないよう…な?

「…ねむ、た」
「…あ、ちょ!おい…!」

ゆっくりと一護のベッドへ腰を下ろし一護何て放っておいて横になる。案の定一護は焦ったようにどけ、とか降りろとか言うが気にしない。

「…ちょ、…っとだけ」
「〜〜ッ悠輝…!」

一護の大きな声を聞きながら目を閉じたがその瞬間ピピピ…、と機械音が鳴り響く。

「………一護、煩い」
「馬鹿野郎、俺じゃねぇよ!」

なんだなんだ、と辺りをキョロキョロする一護に目をこすりながら立ち上がる。音の場所を辿ろうとした瞬間、

「一護…!」
「うわあああああッ!!!!」
「ル、ルキア!!?」

バンッ、と勢い良く押し入れが開いたかと思えば出てきたのはパジャマ姿のルキアだった。

突然の事であたふたと焦る一護と俺だが突然またあの痛みが響く。

「……や、ばっ」
「…悠輝?おい、悠輝!!」

「来るぞ…!」
「え、ちょ…ちょっと待っ」

手袋を構えたルキアは勢い良く一護に向かい死神姿の一護を出した。その瞬間ベッドの方から巨大な手が出現する。間一髪と言うところか、

胸を何かに貫かれるような痛みと頭痛は最初ほどの苦痛ではないがじわじわと痛み出す。

「…ルキア、これも虚か?」

「ああ、悠輝貴様は離れておれよ」

「……ああ、…!」

ルキアに言われ一歩下がろうとするが突如虚の大きな手が此方に伸びる。間一髪で何とか避けるがもう一度此方へと伸ばそうと虚は身体を部屋に現せた。

「…何で悠輝ばかり狙われんだよ!」
「…わからん!」
「っ…!」

ガッ、と一護は虚を食い止めなぎ払い腕を切るがこの程度では倒せず叩き付けられる一護。

「……一護、」
「頭を狙え…!」

体制を立て直し頭を割るように刀を振りかざすが傷は浅く刀を虚に持たれるが何とか渾身の力を振り絞る一護は少し虚の被る仮面が割れる。

「「………な、」」

その正体が井上さんのお兄さんと知る途端お互い言葉を失った。


end