「…あ、れ?」

光の眩しさにうっすらと目を開くと見慣れた天井をぼう、と見つめていたがある事に気付き辺りを見回す。

見慣れた机、本棚、タンスと何も変わらない。ふ、と自分の身体に目をやるが怪我一つしていなくて昨日の出来事はまるで嘘のようだがはっきりとそれは記憶に残っていた。



始まりの



「「……………」」

「いやー奇跡だな、トラックがこんだけうちの中突っ込んで全員無傷とは」

「…それより誰1人起きなかった事の方が奇跡だよ」

朝起きると外には昨日化け物あの死神は虚と言ったか、その虚が空けた穴はきちんとあったがそれはトラックが突っ込んできた事になっている。

それにあの晩怪我をしていた遊子や夏梨はすっかり怪我をした跡さえも残ってなく消えたようだった。勿論自分も、

「…一護、これって…さ」
「…死神流のアフターケアってやつかもな」

「…アフターケア、か」

それよりあの死神は尸魂界とか言う場所に帰ったのだろうか、これで全て収まったのだろうか疑問ばかり増えるが取りあえず、

「……お礼言えなかったな」
「………ああ、」

助けてもらっておいてお礼すらも言えなかった。またもし会う機会があるのならお礼が言いたいな、とぽつりと呟き空を見上げた。




* * * * *


「お、一護に悠輝じゃん!お前等ん家トラックが突っ込んだんだってー?」
「……啓吾」

あれから色々一護と考えていたら見事学校は遅れ昼間に登校して来ると途端に啓吾が笑みを浮かべながら聞いてきた。まずはその楽しそうなうざい顔をどうにかしてもらいたい。

「……まあな」

一応自分たちもトラックが突っ込んだようにしておこうと目でやりとりし一護が答えると案の定食い付く啓吾を見ては苦笑い。

「あ、雪伊さんおはよー!」
「……井上、さん」

振り返ると一護と同じ綺麗なオレンジ色の髪をした井上織姫がこちらをにっこりしながら見ている。最近になってから彼女は俺におはよう、やらお昼ご飯を一緒に食べないか、などを言ってくるようになった。

一護のようなオレンジ色の派手な髪も喧嘩をする不良でもないが女子用ではなく男子用の制服を着用し一護や啓吾、水色以外とは喋らない自分、先生は心広いが生徒はそうにも行かずクラスで浮いていると言っても過言ではない俺に話し掛ける彼女も自分で言うのも何だがかなり物好きだ。

「……井上さん今はもうお昼だよ?」

「ああ!そっかー、ならこんにちわだねー!」

えへへー、と可愛く笑う彼女はクラスの人気者でもありかなりの天然だ。勉強は出来るが何処かが抜けている。だが顔は整っているしスタイルも完璧で何より男子が気にいるであろうかなりの巨乳の持ち主。

「あ、ねぇ雪伊さんも山葵と蜂蜜入り鯛焼き風ラーメン食べる?」

「…わ、山葵と蜂蜜入り鯛焼き風ラーメン?」

正直かなり不味そうだが彼女からしたらそれが普通なのだろう、何時か腹を壊しそうで怖いのだが。それよりラーメンは弁当の内に入るのだろうか?

「すっごく美味しいよ!」
「…いや、止めとくよ」

「…そう?じゃあまた食べようね!」

今にも食べさせられそうな勢いに少々引きながらも断ると一瞬残念そうな顔をしたが直ぐに笑顔になり今度食べようね、と一言残し友達と去って行った。何時も断っているのに何度も誘ってくれる彼女は抜け過ぎてはいるが悪い子ではなさそうだ。


「…次、何だっけ?」
「現国、」

井上さんとの会話で一護たちの話を聞いていなかったがどうやら話は終わったようだ。次は現国らしく俺は黒板へと目をやるが後ろからふ、と声を掛けられる。

「あら、あなた達が黒崎君に雪伊さん?」
「「…………え?」」

その声に少々聞き覚えがあり振り返ると一護同様にフリーズする。当の本人は何事もなかったかのように悠々と口を開いた


「黒崎君の隣の席になりました。朽木、と申します」

「………なな!!」
「………て、てめぇ!!」

一護の隣の席になった死神、朽木ルキアに一護と自分はそれぞれ声を上げる。啓吾や水色は一護と自分の反応に頭にハテナマークを浮かべチャドは知り合いか?と冷静に聞いてくるが答えられる程冷静ではない

「いーえ、初対面ですわ。ねぇ?黒崎君、雪伊さん」

にっこりと微笑まれて返す言葉もなく無言でいると水色と啓吾は普通に転校生だと説明した。と言うか啓吾がルキアちゃんと呼んだのには心底吃驚する。

「よろしく!」
「………え、」

差し出された手に戸惑いを隠せずにいると手のひらに黒い文字が書かれている。内容はまさかの騒げば殺す、と書かれており騒げる訳もなくただ無言を貫いた。それを目にしにやりと笑みを深めた彼女を見て悪寒が背を走ったのは言うまでもない。



end