「―――――――ッ!」

「…おい!今…」

ドクン、と胸を貫くような痛みは徐々に強くなる。一護も何か感じたのか声を上げるが少女には分からなかったようだ。

「…何れにせよ、二匹目がこの付近を徘徊しているのは間違いない」

「………な、」

その言葉で嫌な予想が膨らむ。今この俺が感じているものはもしかしたらその虚とか言う化け物ではないのか?

――――――冷や汗が地へと滑り落ちた。



記憶の




「じゃあ、その二匹目とっとと退治しに行け!」

一護が声を上げるが少女はそれを聞き俯き加減で声を発する。

「…いや、それが先程からどういう訳か気配を全く感じなくなってしまったのだ、まるで何か大きな力に感覚を阻害されて…」

「何言ってやがる!!すげぇ声がしてんじゃねぇか!!?」

「………大きな、力」

少女にはやはり先程のものも分からないとなると大きな力が少女の感知力を阻害している事となる。だが俺は阻害されていない、一体どういう事だ?

「あれは違うのかよ…!?」

「…凄い声?そんなも――!」


「―――――!」

ぞわりと周りに悪寒が走る。鷲掴みにされたような心臓に関わるな、と脳でなる警報に思わず頭を抱える。

「―――悠輝?!!」

「…大丈夫、だ」

「…間違いない、虚の声だ!」

「………な、」

少女の言葉に先程の悪い予感は見事的中する。少女が慌てたように立ち上がった瞬間何かが壊れる音と遊子の悲鳴。

「――――遊子!!!」

「こら、貴様…!」

後ろからの少女の声や頭痛の事など忘れ無我夢中に部屋の扉を開ける。開けた途端ドクンとまた胸を貫く感覚が俺を襲う。

「……っゔ!!」

「…………っ!!」

俺と少女は暫く扉の前で立ち止まったがある声に俺は息が出来なかった。



「…お兄ちゃん、お姉ちゃ…」

「………遊、子?」

ボロボロになり怪我をした遊子は力を振り絞ったように俺に寄りかかり倒れかかる。全てにまるで色が無くなったような、


「…夏梨ちゃんがっ…助けて」

「………ゆ、ず」

服を捕まれ息切れ切れに話す遊子は言い終えた後には気を失っていた。が下からは夏梨の声に肩が揺れる。

「………夏梨っ!」

「っ、行ってはならぬ!」

頭が割れるような頭痛と吐き気に倒れそうになるものの足はきちんと地を踏んでいる。階段を下りリビングへと向かうがそこはもうリビングと言うには無理過ぎる光景が広がる


「……な、んで、」

リビングの目的を失った大きな穴の外は夜の光に照らされた化け物とその化け物の手の中にいる夏梨。頭の血が上がるのが感じられた。










「――――――貴様あぁぁあぁあぁあ!!!!」

自分の声じゃないような声が辺りに響く。俺に気付いた化け物はにやりと笑う。……気持ち悪い

「…っ、悠輝姉…逃げて!」

「―――――!」

今の自分じゃ何もならない事なんてわかっていた。それでも俺は歩を進める。

「………くそっ」

適当に手にとってものを化け物目掛け放り投げる。ぱしっと当たったものは化け物からしたら埃みたいなもので簡単に跳ね返される。

「おらぁあぁぁあ!!!!!!」

「………一護!?」

先程まであの少女に鬼道とか言うものを掛けられていた筈が目の前には化け物に向かう一護。少女も一護が鬼道を解いた事に吃驚したように突っ立つ。


「――――ぐあっ!!!」

「……一護!!!」

だがまるで虫を払うかのように飛ばされる一護。慌てて駆け寄ろうとするが突如真横から大きな手が伸びて来て避ける事も出来ず身体は捕まれ身動きが出来ない挙げ句ギチギチと奴は力を入れ俺の身体の骨は悲鳴を上げる。

「…っい゙ああああああ!!!!」

「――――悠輝っ!!!!」

容赦なく化け物は手の力を強め俺の身体の骨がギチギチと締め付けられ呼吸すらも困難になって意識が朦朧とする。

「はああああっ!」

「………っ、?」

少女の声と共に刀を振るう音がしたかと思うと俺の身体は宙を舞って力なく地面に落ちてゆく。ぎゅ、と目を瞑り地面に身体を打つ衝撃を待ったが来たのは何かに抱きかかえられる衝撃、

「………っゔ」

「……悠輝、大丈夫か?」

ゆっくりと目を開くと覗き込む一護の顔が見える。……良かった、思ったよりも怪我をしていない。

「どうして、あの時俺に駆け寄ろうとした!!?」

「…馬鹿、当たり前…だろ」

大切だからだよ!と声に力を振り絞り口にすると弱々しく馬鹿野郎と言われその瞬間良く鼻にする一護の匂いが俺を包んだ。

「それより、夏梨…は?」


「……大丈夫だ、」

そう言って一護は横に目をやりそれに釣られ目をやると安全な場所に夏梨は横になっている。どうやら俺が捕まった時に解放されたようだ、

「…良か…った、」

段々と意識が朦朧としはっきり目が見えなくなってくる中うっすら聞こえる声に耳を傾ける。

「……全ての狙いは貴様等だ」

狙いとはどういう事なのか、見えない目で一護を見るがやはりぼやいている。

「悠輝、此処で待っとけ」

「…いち、…ご」

行くな、そう言いたい筈なのに口は思うように開かず名前を呼ぶだけで精一杯でそんな俺に気付かない一護は俺をそっと置いて化け物へと向かった。

「お前俺の魂が欲しいんだろ?」

「…や、め…」

出ない声に必死で手を伸ばすが遠く届かない。一護が叫んだ途端化け物は容赦なく一護を襲うが、


「………な、」

「死神……!」

霞んでいる目でさえはっきりと見えたのはばしゃ、と血舞い倒れ落ちた少女の死神だった。

「…このっ戯けが…っ」

苦しそうに顔を歪める少女は痛々しくて見てはいられない。助けようにも段々と脳が麻痺してゆき目は自然に閉じられる。


「…貴様が死神なれ!」

少女の言葉がゆっくり耳に入る。一護が死神になるのだろうか、必死に意識を手放さないように頭をフル回転する。

「…刀を寄越せよ、死神」

「死神ではない、朽木ルキアだ」

その言葉に一護は死神になるんだと分かる。だがそれを止めろ、と脳は警報を鳴らすが今の俺には無理に等しすぎる。

うっすらと目を開けた先には黒い着物を着た一護を写したのが最後だった


end