意味も無く"任務"と言う肩書きだけで目の前の人間を手に掛けてゆく。暁に属した頃から変わらない任務はそんな仕事ばかりだった、あの頃俺は人間に手を掛けながらそんな自分に俺は何度も悔いた、


……だが、今はその悔うことすらも無くなった。慣れというものは本当に怖いものだと実感する瞬間だった。



「…イタチさん、そろそろ行きましょうか」

「…ああ」

森の中で暫く休憩をしていた俺と鬼鮫は鬼鮫の言葉に腰を起こす。今回の任務は大名殺し、暁の邪魔になるであろうものは即座に殺すのが当たり前だ。


「……鬼鮫、」

「なんです?」

「……お前も、わかっているだろう」


"わかっているだろう"その言葉を聞いた矢先に鬼鮫はクツクツと笑い出してはあなたにはお見通しでしたか、と口にした。


言葉の意味、それは言わずとも分かる微かに臭う血の臭いに嫌でも顔が歪んだのがわかる。俺はそちら側へとゆっくりと足を進めた。


「…行くのですか?」

「………」

「……仕方ないですねェ」


俺の無言にも関わらず仕方ないと言っておきながら何故か楽しそうに笑みを浮かべる鬼鮫、そんなにあいつはこの臭いが良いのか。


「……浮かない顔ですね、あなたらしくない」

「……そうか、」

奴にとって俺の"浮かない顔"とは一体どんな顔なのか。何年も共に行動している故に奴は俺の表情や感情が少しながらも読み取れるのだろう、俺も嫌々ながらでも奴の表情や感情、考えているであろうことは少しながらも読めていた。



辺り一面が森の中微かな臭いと気配を辿って行けば確実にきつくなってゆく臭い、進んでいれば何時しか辺りは真っ赤な血の海だ


「…一戦やったみたいですね」


辺りに転がる肉の破片にどす黒い色をしている血が流れ出しているのを鬼鮫が見ながら口にした。

「……鬼鮫、」

「わかってますよ、」

鬼鮫は俺の言葉を聞くとその血の海の中へと入ってゆく。静かな森の中に足元の血が跳ねる音だけが聴こえた。


血の海の中を進んだ鬼鮫はちょうどその中心とも言える場へと足を止めた。



「…辛うじですが、生きてますよ」


"辛うじて生きている"その言葉に俺はゆっくりを歩をその場へと進めた。ちょうど中心にはサスケと同じくらいの少女が倒れていた。

「どうします?何なら此処で斬り殺しますか?」


クツクツ、とそれは楽しそうに笑い少女へと鮫肌を近付けた。

"殺す"その言葉が妙に引っ掛かっていた、少女をこの場で殺す。それは毎度やってきた自分にとって何も躊躇いなど無かった筈だった。

小さな子供から女まで任務ならば容赦なく殺したはずの俺が今こんな少女を殺すだけで躊躇っている。


「……イタチさん?」

「………」

無言の俺に鬼鮫は口を開くが今は鬼鮫の言葉さえも俺には耳に入らなかった。


「……鬼鮫、」

「……イタチさん、もしかしてあなた…」

俺の言いたい事がわかったのか先ほどの楽しそうな笑みは消え何時しか真剣な表情へと変わっていた。

「……リーダーに何か言われかねませんよ」


それに荷物が増えるだけじゃないですか、そう口にしながらも鮫肌で少女を担ぎ出した鬼鮫、


「……リーダーには俺から言っておく」

「…はあ、あなたって人は」

少女を担いでも尚表情すらも変わらない鬼鮫。少女が異常に軽いのか、鬼鮫が少女一人担いでもそれはそれで何も変わらないが。


「………」


俺が担いでも良かった、不意にそう感じた。何故かはわからないがそう感じた、けれど何故か俺自身が拒絶する。少女に触れてはいけないと、


そっと自分の手を見る、一般と何も変わらない普通の手だがこの手は何度も血や罪に汚れていた。そんな手で少女に触れることは赦されるはずもなかった。


「…珍しいですね、あなたが拾いものをするなんて」

「………」


何時しかまた別の意味で楽しそうに口元を緩ませている鬼鮫に目だけを向けゆっくりと歩き出した。




end