籠の鳥 3

「…すいません。」
「そうじゃない、君がこうならないよう仕事を頼むつもりだったが、一足遅かったらしい。」
「別に、気にすることでもありません。いつもの些細な…」
「塔のことで私が知らないことはない、知っているはずだ。無理しているな、ルーフェウス?」
「……筆頭魔道士から魔術を教えてもらえるなら、別にこのくらいは…必要な犠牲だと思って、無視できます。」
「生き残りたければ、規則を守り時に犠牲も必要だということを知れ。確かに私の言葉だ。しかし、私は意味なく一人が犠牲になればいいなどとは思っていないのだよ。」
筆頭魔道士アーヴィングは、さわさわと優しく頭を撫でる。
「や、やめてください。こんな風にされると、余計……。」
「辛いなら、そう言えばいい。君の導師は私だ。それとも、救うだけの力がないと思っているのかね?」
「違います、筆頭魔道士。ちがう…。」
押し込んでいた感情が、揺すぶられる。肩が小刻みに震え、唇を噛み締めないと、涙が溢れそうだった。
「"僕"は、子供じゃないから…どんなことも…流せるっ…。」
「私から見れば、十分子供だ。未熟な見習いだよ?」
「…こんなことで、泣きたくない、のに。」
心を偽る術は身につけているのに、相手に心を読ませない話術も心得ていたはずだ。それなのに……。
「…っつ、う、僕はっ……。」
一度流れた涙は、止めることが出来なかった。止めようとしても頬を伝い、次から次から溢れ出す。理不尽な迫害に、怒りや怯えや恐怖や殺意…黒い感情が鬱積し心を押し付けていたが、平気だと自分で自分を誤魔化し耐えてきた。
「僕は、何も、悪くない…!それ、なのにっ……!」
優しく抱き寄せられ、アーヴィングの胸に顔を埋める。肩を震わせ嗚咽する華奢な身体を抱きとめて、暖かな手のぬくもりが背中をさすった。
「落ち着いたかい?」
「…はい。」
「無理はするな、負の感情にとらわれると、ろくな結果は生み出さないんだ。私はグレゴーに呼び出されていてね、夜まで戻れないから、それまで部屋を片付けて留守番をしていてくれ。それが、私から君への仕事だ。」


籠の鳥だった自分。今は、グレイウォーデンとして身を捧げた以上、もう前に進むしかないのだが内心不安もある。2人には、そんなことは言えないが。
「サークルにも協力を頼むんだったな、筆頭魔道士なら、必ず力になってくれるはずだ。」
「お前の育った場所だからな。…ついでに、モリガンを置いてこれればいいんだがな。」
「あら、貴方が教会にかえればいいんじゃないの?」
「とにかく、行こう。」


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