籠の鳥 1

「で、アイツの事、どう思ってるんだよ?」
「あいつって誰よ?」
「あの色男のことだよ。お前に気にられてるとか、可哀想に思ってな。」
そう言って指さす先に、2人の前を歩く銀髪の魔道士の姿があった。
「あら、お気に入りのウォーデンをとられて妬いてるの?だったら、ちょっとは気にかけてくれるように頼んできましょうか?」
「そんなつもりで言ってない!ただ、アイツがさんざんもてあそばれた挙句、むしゃぶり食われたらかわいそうに思ってな。」
「アリスター、心配しなくても、アンタのものにしゃぶりつこうとは思わないから安心して。」
「なっ?!」
「なんなら、どう思ってるか、2人で行って聞いてくる?」
「いや、いい。」
「逃げるなら、かかってこないでよ」
「モリガン、アリスター?」
「いや、なんでもないんだ、ルーフェウス。早く行こう。」
「アリスターが、オレを捨てないでくれって嫉妬してるわよ。」
「してないっ!」
 横を向き、髪をグシャグシャ掻きむしるアリスターに近づくと、ルーフェウスはその淡いアイスブルーの瞳で彼を見上げる。
「俺は、アリスターを見捨てたりしない。大切な家族みたいなものだから。」
「ルーフェウス…。」
「良かったわね〜。口の上手いルーフェウスが、あんたのお嫁さんになってくれるって。」
「モリガン、俺は男なんだけど?」
「あら、そうだった?」
ニヤリと笑う彼女にルーフェウスは苦笑する。しかし、今も彼女のほうが背が高く、見上げている状況なので強く否定するのも子供じみているようで嫌だった。それに、女扱いさればかにされることには、ある意味慣れている。外の世界に出て、初めてエルフへの風当たりの強さを実感した。魔道士だと告げると、逆に逃げ出す人間も多いのだが、ほとんどのエルフは、奴隷として厳しい生活を送っているのだ。魔術師のサークル、サークル・オブ・メジャイで、物心付く前から育った自分は、まだ幸せな方だったのだと今さらながら実感する毎日だ。
「ルーファウス、真っ白な肌が日に焼けると痛いわよ?後で日焼け止めあげるから、テントまで来て。」
「なんだ、真昼間から誘ってるのか?」
「あら、またヤキモチ?ひょっとして、彼を誘う予定でもあったの?」
「そんな趣味は、俺にはない!」
闇の驚異はヒタヒタと身に迫るが、今日も無事、旅を続けている。


 カレンハド湖にそびえる魔術師達の住む塔、サークル・オブ・メジャイ。人々から悪鬼になると恐れられ、闇に近いと恐怖される魔術師を集めたこの美しい牢獄が、自分の故郷であり家族であり、唯一の世界だった。あの頃、自分に外に出る日が来るなどと、思いもしなかった。籠の中に閉じ込められ、空を知ることもなかった自分が、こうして今、仲間を見つけ青い空の下旅をしている。それは、奇跡的な出来事だ。


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