究極の犠牲 2

ドラゴン砦の屋上、ダークスポーンを統率し、闇の支配者たるアーチデーモンがついに倒れた……。

『アーチデーモンを滅ぼすには、グレイウォーデンの命と引換えにするしか手段がない』
『一人の命で大勢が救われるんだ、安いものだろう?』
『愚かな人!勝手に死んでしまえばいいわ!』
『この友情が終わるとは思いたくないが、それでも、一緒に歩むのはここまでだ。』
そんな、仲間達の言葉を思い出す。
ロゲインが、声をかけた。
「諸侯会議で命を救ったのは、このためだろう?」
「…英雄として、死ぬつもりか?」
「私には、数多くの拭いきれない罪がある。洗礼の儀式で生き残ったのは、この役目を果たすためだろう?私にやらせてくれ。」
汚名を着せられ、命を狙われ、拷問にまでかけられたこの男を生かしたのは……彼が、この国を救うという信念にとりつかれていたからだ。殺すべきでは無いと、思ったからだ。
友人と筆頭魔道士を天秤にかけ…友人を売った。
友人を政略結婚の駒に使った。
資金を得るため、暗殺も請け負った、死体も捨てた。
禁を犯し、悪魔と取引しブラッドマジックにも手を染めた。
心は決まっていたのに、どちらか一人を愛すると、誓うこともしなかった。

思えば、たくさんの人を傷つけ、今も、傷つけようとしている。

耳につけた金のイヤリングに手を添え…私は、意地悪く笑う。
「諦めろ、止めを刺すのは、アーチデーモンを倒した者の役目だ。」
走る。
走る。
倒れた兵士の剣を引き抜くと、その竜の巨体に、深々と剣を突き刺した。断末魔の咆哮が響く。
確かな手応え。
暴れる竜の背中を引き裂くと、その頭部に剣を……突き立てた!
アーチデーモンの、悲鳴と共に、身体に異質で強大な力が流れこむ。
その巨躯が光りに包まれ、強い輝きが収束していく、自らの、中に。
「ルーフェウスっ!」
眩しい光の向こうに、彼の姿が見えた。
自分は、極悪人だ。愛しい人の前で、自分の気持ちを伝えたくせに…死ぬのだから。男同士、それでも未来はあるはずだと、僕はその時確かに告げた。それなのに……いけないと分かっていて、傷つけると知っていて、『最期』に顔が見たいと思った。別れを言わないまま、覚悟を告げずにこの場所にゼブランを連れてきたのは、僕のエゴだ。
「悪魔の門でも共にくぐるよ」
そう言ってくれた彼の顔が脳裏から離れない。初めて愛した、大切な人……。

『ゼブラン、わがままに付きあわせて、すまない』

救われるだろう、国も、多くの人々もサークルも、ゼブランも……――。魔法は、人によって使われるものであり、人に使われてはならない。だから、禁を犯してブラッドマジックにも手を染めた僕は、

『この生命を、捧げよう。』


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