悪鬼邂逅 3

黒耀は睡蓮の手を引き、泡沫はイモリの姿をとると睡蓮の肩に乗った。
「泡沫、面白い話を聞いたぞ、内裏に人を喰う鬼が出るそうだ。知っているか?」
「人を喰う妖かしなど、その辺に沢山いるだろ?珍しくもない」
「骨のあるやつだと思うか?」
「わざわざ内裏に現れるくらいだからな。なんだ、喰うつもりか?」
「クク、許可がおりればな?」
「……そんなにお腹が空いてるの、黒耀?」
「楽しみたいだけさ、力も欲しいしな。今のままでは、我ながら脆弱すぎるからな。泡沫、貴様もそう思わないか?」
「まぁ、たまには娯楽が必要だからな」
「……3日後、内裏に用があります。もし鬼退治の機会があったら、その時には頼むわね」
(「高子様に色々教えていただいてる間に、すっかり遅くなってしまいましたね」)
本を抱え、睡蓮は清明の屋敷へ戻るため、内裏の外へ繋がる上東門へと急いでいた。
この辺は、『あの噂』のせいかひっそりと静まり返っている。
(「なんだか、疲れました……眠い……」)
コシコシと、袖で目をこする。
「かような時間にかような場所で、『男の子』が一人で何をしているのだ?」
不意に声をかけられ顔を上げると、一人の男が立っている。
童水干を着ているためか、少々誤解しているようだ。
袍(ほう)の色から考えると、身分のある貴族のようだが……。
「屋敷に戻るところでございます」
「噂を知らぬのか?最近、内裏には鬼が出るそうだ。供も付けず出歩くのは危険だぞ?私が送ろう、どこに帰る?」
「安倍晴明様のところです」
「……ほぅ」
男の口元が、くっと可笑しそうに半月を描く。
スッと歩み寄る男。
間近で見ると、見惚れるほど美しい顔立ちの男だった。
「子供が起きているには遅すぎる時間だ。眠くはないか?」
「はい、でも、すぐに屋敷に付きますから……」
言いかけて、不自然なほどの睡魔に囚われ、ぐらりと睡蓮は倒れこんだ。
それを受け止めた男の身体はひどく冷たく、生気を感じない。
「貴方は……」
「男かと思ったが、女の子であったか。あの陰陽師の屋敷に居るとなれば、只者ではあるまい?……山吹の髪に青き瞳か、これほどの白い肌も珍しいな、余さず喰ってやるから、安心しろ」
バサリと、両手から本が滑り落ちる。
その中には、式神帳も含まれていた。
「黒耀、泡、沫……白……」
眠気に飲み込まれ、そのまま鬼の懐で眠りにおちた睡蓮。
「さて、後はゆっくりと……」


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