月に住む人 3

あたりがすっかり暗くなり、庭で微睡んでいた2人は人型へと姿を変え、落ち着きない様子で部屋を歩きまわっていた。そこへ、焦がれてやまない睡蓮の声と、昼間の男の楽しそうな声が聞こえてくる。
「重信様、送っていただき、ありがとうございました。」
「そんな、堅苦しい挨拶せんでもええんやで、睡蓮ちゃん。また、暇見つけて遊びにおいでぇや、なんなら、住み込んだってのーぷれぶれむ、やで。」

『絶対、駄目だ!!断固、反対だ!』

ぐいと、睡蓮を引き寄せる黒耀と泡沫の2人。妙な言葉だったが、なんとなく伝わった。ここは、断固拒否する場面だと。
「く、何故こんなに親しくなったんだ?いいか、睡蓮は俺の嫁になるんだ、手を出すのは例え同じ見かけをした人間であろうとやめてもらおうか!」
「泡沫、睡蓮は俺のものだと言ってるだろう?あぁ、貴様の作戦は外れてばかりではないか。ほら、睡蓮、もう遅い。お前は子供なのだから、もう寝るぞ。」
「ちょっと、黒耀、泡沫…重信様、これからよろしくお願いします。」
「よろしくなどするな睡蓮!くそ、式でなければ取って喰うてやるものをっ!」
黒耀は、そう毒づく。彼は睡蓮を部屋の奥へとさっさと連れていき、敵意いっぱいに重信を睨みつけた泡沫は、御簾を下ろした。
「…嫁、ねぇ。まぁ、守ってあげたいタイプやからね。それにしても、ああゆう妖かしでも、心酔するっていうか、惚れ込むことがあるっていうのは意外だな。ますます楽しそうだ。」
「若、悪ふざけは程々にお願いしますよ。」
足取り軽く帰る2人とは対照的に、御簾の向こうでは、必死で男には簡単に心を開くなと説得にかかる黒耀と泡沫の姿があった。


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