花去 kako 4

「書庫に居ないと思ったら、こんなところに居たのか。」
「レムオン。」
「柄にもない、花を見る趣味があったとは驚きだ。」
「考え事してたんだ。本当の自分を見つけられないまま、消えちゃうこともありえるのかなって。」
ケテルは、微笑んだ。レムオンは、ため息をつく。またコイツは、笑うという観念を間違えている。不安な時に、ニコニコ笑ってどうしようというのだろうか。
「…馬鹿ばかしい。」
レムオンは、ケテルに近づき前に立つ。
「お前は、ケテル=リューガ。俺の妹だ。本当も嘘もない、お前はお前だ。」
「でも、私が妹だなんて所詮嘘だ。私は、レムオンがどんな風に育ってきたのか…懐かしい思い出とか、何も共有するものがないよ?ティアナ様みたいに、昔のレムオンの事も知らないし…。」
ここでどうしてティアナの名前が出たのか、ケテル自身良く分かっていなかった。セバスチャンやエストのほうが、よりレムオンの事を理解しているだろうに。
「昔を懐かしんだところで、今が変わるわけでもない。お前にしても、俺にはお前が記憶を取り戻したところで、その性格が治るとは思えんが?」
自分より何センチも低いケテルの頭にポンと手をやり、レムオンは言葉を続ける。
「お前の過去など関係無い。ケテル=リューガ、それがお前だ。首を突っ込んだのはお前の方からなのだから、いい加減諦めろ。それに…――。」
 
桜など、春になれば何度でも咲く。ここでくだらん話をした事など、来年には、お前の言う”想い出”になっているさ。

「…うん。」
「セバスチャンが、食事の用意が整ったと呼んでいた。もう行くぞ、いつまでも外に居ては風邪をひく。無茶していたのだろう?いつもの無駄な元気がない。食事をとって休む事だ。」
レムオンに後ろから肩をおされ、ケテルはその場を離れた。

舞い散る桜、来年は、レムオンと一緒に見たい。
言われて気づいた、想い出なんていくらでも作れる。
それに、レムオンが私を私だと言ってくれるなら、過去にそれほどこだわる必要もないのかもしれない。
今の私も”本当”だと言ってくれた。

もし、私を知っている人を見つけたら言おう。
とても大切な、兄が出来た事を。


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