花去 kako 2


「…――疲れた。」
「ケテル、宿屋で休むと色々声掛けられて面倒だから、リューガ邸で休むんじゃなかったの?何してたのよ?」
「王女に拝謁。」
「なに?本格的にお貴族様デビューて訳?」
「イーシャも貴族の出だって言ってなかった?あんなに堅っ苦しいの?」
「私は色々あって、知らないのよその辺は。話を戻すけど、ちゃんと休まないと、身体持たないわよ?」
宿屋に着くなりベッドに倒れ込んだケテルを心配し、声をかけるイーシャ。ロストールに戻りしばらく休息する事を言い出したのは、ケテルだった。冒険者として腕を上げ始めたケテル、当然駆け出しのころ依頼されていた配達やちょっとした護衛ではなく、腕を見込まれ救出や魔物退治の依頼を受ける事が多くなっていた。強力な怪物やモンスターが相手になったりと危険度が高い分報酬もいいが、最近の彼女は大怪我をすることもあり、魔法で身体を癒ししのぐことが多くなっていた。周りの仲間が心配するほど、冒険者のわりにケテルは華奢な体型をしている。初めこそ剣を振るっていた彼女だが、魔法の方に素養があるらしく、最近は剣での戦いを好まない。魔力の限界ギリギリまで呪文を放ち、薬で回復させることを繰り返している。
「休みたかったんだけど、馬鹿レムオンが私を引きずって行くんだもん。ほんとは、書庫で魔道書あさりたかったのに。使える”歌”とかさ。」
「最近好きよね、いっそ吟遊詩人にでもなる?」
「それもいいかも、歌唄うだけなら大怪我もしないし。…ま、それだけじゃつまらないけど。あ、イーシャも自由にしてよ。後でオルファウスに連絡してあげるから。」
枕に顔を埋めると、すーすーと寝息を立て始めるケテル。イーシャは、彼女に布団をかけ直しそっと部屋を出る。

翌日、再びリューガ邸を訪れたケテル。部屋に入ると、待っていたかのようにレムオンが声をかけてきた。
「よく来た、ケテル。今からティアナ王女に会いに行く。お前も来い。」
「はぁ、分かったわよ。」
「…いやに素直だな。どこか身体の具合でも悪いのか?」
「別に。」
「フッ、さすがは丈夫なだけが取り柄の奴だ。」
「は?」
「ほめたつもりだが…。ふふっ。不器用な兄をゆるしてやってくれ。」
「そうゆうの、不器用じゃなくて嫌味って言うのよ?だいたい、私を熊か何かみたいな言い方しないでよ!」

「これはレムオン様、それにケテル様。ようこそお越し下さいました。」
「ティアナ様にもご機嫌うるわしく。」
「ティアナ様、またお会いできて光栄です。」
直前まで不機嫌な顔つきでふくれていたいたケテルだったが、そんな素振りは微塵も見せずティアナに微笑みかける。
「さぁ、御遠慮なさらずに奥へお入りくださいませ。」
「ずいぶん丁重なもてなしようではないか?」
「お母さまですら一目置くレムオン様のおいでですもの。当然の対応ですわ。」
「笑える冗談だ。しかし、どういうものかな?俺のような者を部屋にいれるとは。フィアンセが聞いたら怒るのではないか?」
「婚約者といっても、お母さまが勝手に決めたこと。幼なじみのレムオン様の事をとやかく言われる筋合いはありません。だいたい、酒とバクチにおぼれて宮廷に近寄ろうともしない方をティアナは婚約者とは認めません。いっそのこと、レムオン様が私の夫になってくださればいいのです。」
「…それはできんな。」
「まぁ、意地悪!でも、ふふふ…レムオン様らしいわ。迷うそぶりくらいみせてくれても、バチはあたらなくてよ。」
「何も王が男子でなければならぬ理由はない。ティアナも、エリスのように女王として君臨すれば、無理に結婚することもなかろう?」
「女が出しゃばるのは好きではありません。特にお母さまのように出しゃばるのは…。それに…。」
「どうする、ケテル?お前、いつも男なんかに負けないと言い張っているではないか。」
「すみません。ケテル様がどうこうと申しあげるつもりはなかったのです。」
「フフ。ティアナ様、お気になさらないで下さい。」
「許してやるのか……。お前、もしかして俺以外には寛大なのか?」
「私は、ファーロス家を発展させるための道具ではありませんもの。」
「やれやれ、エリスも哀れだな。ファーロス家発展のために知略の限りをつくしたところが…娘のわがままのせいでその綿密な計画も水の泡か。」
「ひどいわ、レムオン様!わがままだなんて。」


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