花去 kako 1

街を歩けば、否応なく視線を集める。
青みがかった銀の髪。(くすんでいて嫌いだ)ヘテロクロミアの瞳(出来そこない)
それでも、期待せずにいられない。

私を 知ってますか?
私を 探していませんか?


「ケテルか。今からティアナ王女に会いに行く。お前も来い。」
「嫌だ。なんで私が?」
「王女に拝謁して損は無い。お前もそろそろ、貴族として社交界に名を売っていいころだ。」
「別に、貴族として名を売る必要なんてないと思うけど?」
「ダメだ。お前は、俺の妹だ。言う事を聞いてもらう。それとも何か?俺がお前の意見をくんでやるとでも思っているのか?」
「まったく思わない。」
「正解だ。よし、行くぞ。」

半ば無理やり王城に連れてこられたケテル。豪奢で荘厳な造りの城内をレムオンと連れ立って歩くと、すれ違う多くの人が進路を譲り頭を垂れる。初めて登城した時は緊張でわからなかったが、エリエナイ候と呼ばれるレムオンの権力がどれほどのものかをひしひしと感じる。それと同時に、彼女自身に向けられた視線も痛いほどに感じた。王宮に限った事ではないので、さほど気にしなくなったとはいえ、やはり居心地のいいものではない。
「ふてくされた顔をするな。凛として歩け。」
「はぁい。」
くぎを刺され、ケテルは気の無い返事を返す。
 やがて、王女の部屋へとつづく空中庭園についた。屋上に造られた中庭には、地上の庭と同じように様々な花が咲き誇り、奥には噴水まであるようだ。この辺は、同じ貴族といえど、七竜家につらなるような大貴族や将軍クラスの騎士のみに立ち入りが許されているらしい。
「ティアナ王女はお前と同じくらいの歳の小娘だが、王宮での暮らしが長いうえに、あのファーロスの女狐の娘だ。服装や言動には細心の注意を払え。いいな、絶対に見破られるなよ?」
「了解。」
「では、行くぞ。」

「ようこそおいでくださいました、レムオン様。」
「これは、ティアナ様。本日もお美しくてなによりだ。」
「まあ、お上手ですこと。妹君の前では、紳士で通すおつもりかしら?」
「これは、お耳が早い。さすがは諜謀に長けたエリス女王の娘だ。紹介する、俺の妹で、ノーブル伯のケテルだ。」
「あら、ファーロスの女狐の娘でなくても、ノーブル伯の事は誰でも知っていますわ。王宮中、その噂でもちきりですもの。」
「まったく、くだらん噂話ばかり早く広まるな。」
「はじめまして、ティアナです。」
「こちらこそ、ケテルです。」
若草色のドレスを身にまとった美しい少女。レムオンと同じく輝くような金髪、明るく頬笑みかけるその態度も洗練されていて、同じ歳くらいの同じ女性といってもケテルとは何もかもが違っている。
「…忙しい身なので、俺は失礼する。ケテル、後は好きにしろ。」
「まあ、お忙しいのですね。もう少しゆっくりなさっていけばよろしいのに。」
「婚約者殿が許せばな。」
「私は、あのような方を婚約者だと認めていません。レムオン様、またいらしてください。」
「時間が許せばな。では、失礼する。」
ケテルからしてみれば大げさなほど恭しい挨拶をかわし、レムオンは部屋を出て行く。残されたケテルは、王女を前に何を話せばいいか迷ったが、レムオンが口にした婚約者というのが気になり尋ねてみた。
「貴族としての責務もはたさず、王宮に近寄ろうともせず、酒と女に溺れるような人をティアナは婚約者とは、認めません。」
「婚約者どのは、兄とは、対照的な相手なのですね。」
「それはもう、レムオン様は、子供の時からああですから。こんなこと、実の妹君であるケテル様に言うのもおかしいですわね。」
「え?いえ、私は、事情が事情ですから、幼いときの兄の事は、あまり知らないのです。」
「そうだったのですね。申し訳ありません、お気を悪くしたかしら。」
「いいえ。よろしかったら、兄やティアナ様が幼かったころのお話など聞かせてください。」


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