恋人を射ち堕とした日 3

「愛するって、わからないけど。レムオンが、あんな風になっちゃったら、悲しい。嫌だ、もの。」
「お前…。」
ケテルは、泣きながら言葉をつまらせる。
「ただの作り話で泣くな。それに…俺は、魔物相手に引けを取るような間抜けじゃない。」
「うっ、だって…。」
女の扱いに慣れていないレムオンから優しい気の利いた言葉は出なかったが、それでもケテルは、彼の言葉を聞き落ち着きを取り戻す。
「勝手に俺を殺すな。」
「…――うん。」
ようやく涙が止まったケテルに、レムオンがハンカチを手渡す。
「化粧がはがれるぞ?」
「そんなに厚塗りしてない。」


歌劇を見終わった二人は、リューガ邸へ戻る馬車の中にいた。
「コルセットが苦しい〜。ね、レムオン、ちょっと背中外すの手伝って?」
「馬鹿か、家まで我慢しろ!」
「死んじゃうわ。」
「まったく。」
すっかりいつもの調子に戻ったケテルに、レムオンはため息をつく。すると、突然横に座っていたケテルがレムオンの首に両手をまわし、まとわりついてきた。
「決めた。私、もっと強くなる。」
レムオンの顔を見上げ、キラキラと目を輝かせるケテル。
「レムオンが魔物になっても、私が強ければ、飼い馴らして殺さなくていいじゃない?レムオンが居ない世界に、華なんて咲きそうにないし。」
「…ケテル、そもそも、俺が魔物に襲われるお前を庇うと決めつけるな。見捨てるかも知れんぞ?」
「助けるわよ、レムオンなら。」
「……。」
冷血の貴公子と呼ばれるレムオン相手に、さらりとそう断言したケテル。なぜこうも簡単に、他人を自分の懐に入れる事が出来るのか。レムオンは、彼女の腰に手を回し言った。
「貴様は、甘い。簡単に人を信じるな。」
「誰にでも甘いわけじゃない。レムオンは、特別だって。」
ケテルは、レムオンの細い顎に口づけ、ニッと微笑んだ。レムオンは、難しい顔をして横を向く。
「はぁ、私がキスして喜ばないのって、レムオンくらいよね…。」
「ケテル、お前は妹だ。…って、貴様、今喜ばないのは”俺くらい”と言ったか?」
「んん?聞き間違いじゃない??」
「しっかり聞いたぞ。情操教育だ、愛だなんだと言う前に、貴様に必要なのは貞操教育じゃないのか?!」



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