恋人を射ち堕とした日 1

それをきっかけに、今までに感じたことのなっかった想いを抱くことに


「何見てるの?ケテル。!ちょっ、何ぼうっと見てるのよ?!」
言うなり、イーシャは傷つき地に落ちていた小鳥の傷を癒した。魔法が効くと、小鳥は翼をはばたかせ、空へと舞い上がる。
「キュア、使えるんでしょ?!可愛そうじゃない。」
「可愛そう…そうね、そうかも。ねえ、イーシャ。食事にありつけなかった捕食者も、危険と困難の連続する空に戻った小鳥も、可哀そうよね?」
「…とうまわしな批判?」
「??」
「あなたって、わからないわ。」
「自分でもわかってないわよ?」
「…感情も忘れちゃってる?ケテルって、時々ずれてるわよね。」
「そう?」
小首をかしげる彼女にたいして、イーシャはため息をついた。彼女と行動を共にして、最近分かったことがある。ギルドや酒場ののマスターが、彼女を勇気があるとか度胸があるとか言うけれど、彼女自身、そんなこと感じていないようだ。勇気とか、度胸とかいう概念が無いんだと思う。行動の先にある結果を現象としてとらえているだけ。どうも、人の心を理解する能力が欠如しているようなのだ。ありがとうといわれて、感謝されることを喜んでいる訳じゃない。相手が喜ぶ結果を出せたから、うれしい。そんな感じなのだ。
だから恐怖や恐れといったものにも鈍感で、恋心とか男の下心とかにも鈍感で…ある意味、色々危なっかしくて目が離せない。
「これだけ性格に問題あったら嫌われそうなもんだけど…それが違うのが、ケテルなのよね。」
惹きつけられる瞳、男女の枠を超えた魅力が彼女にはある。これも、無限のソウルの持ち主ならでは、といったところかもしれない。
「何か言った、イーシャ??」
「情操教育でも受けなさい?お人形さんじゃないんだから。」
「ん??」
「ほら、どうせロストールに寄るんだし、貴族らしく絵画をみたり歌劇をみたりそれっぽくしたら?ってこと!」
「ああ、ノーブル伯らしくってことね。イーシャ、レムオンみたいなこと言うのね。」
「心配してあげてるの。ほら、行きましょ。早く宿に入ってシャワー浴びるんだから。」


「で、ここに来た訳か。」
「そ。」
リューガ邸。帰宅したレムオンに、今日イーシャに言われたことを相談する。
「レムオン様、ちょうど歌劇を観覧する予定がおありでしょう。ケテル様を同伴なさってはいかがですか?」
「そうだな…一人で行けば、どうせ娘を婚約者にとかクダラン事を話し始める気だろう。コイツを連れて行けば、風除け程度にはなるか。」
セバスチャンの淹れたカフェオレを飲みながら、ケテルは嬉しそうに微笑んでいる。
「そんなに歌劇を見るのが楽しいのか?」
「初体験だもん。まぁ、記憶が戻ったら違うかもしれないけど。」
「俺は、見飽きてる。目覚ましがいるなら、いい睡眠時間が取れそうだ。」
「ケテル様、レムオン様と同伴するなら支度を済ませませんと。冒険服では、差し支えますから。」
「そうなんだ?まさか、ドレス?」
「そうなりますね。」
ドレスを着なければならないと知り、微笑むセバスチャンと当然だと言いたげなレムオンを見比べて、ケテルは諦めたように立ちあがった。



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