Chapter1 1

「ね、レムオンってば!」
「……。」
「つまんないわね〜、せっかく誕生日なのにっ!ねぇ、レムオン!!」
「うるさいぞ、リムローズっ!そんなに服を引っ張ったところで、俺に何をしろというんだ?!」
朝からテンションが高く、自分の周りに付きまとうリムローズに、レムオンがたまらず叫ぶ。
「何って、デートに決まってるでしょ?何処に行きたい?何したい?」
「お前…現状を理解していて、そんな事を言ってるのか?」
呆れた様子で、レムオンがため息をつく。
「現状って?」
「…俺はダルケニスだ。まぁ、今更隠す気もないが、人間がダルケニ……。」
「要は、行きたいところが無いってことよね?じゃ、支度してよ。私に任せてもらうから〜。」
リムローズは、全く話を聞いていない様子だ。ため息をつき、髪を掻きあげたレムオンは、諦めて出かける準備をする。


「お待たせ、レムオン。」
「リム、その格好は?」
「なによ、デートしようって言ったのよ?私に剣ぶら下げて、冒険衣装で歩けって言うの?」
リムローズは、笑う。白いサマーニットのワンピースに、ふわりと空色のストールをまとったリムローズ。その手には、剣ではなくストールと同じ空色の傘が握られていた。
王宮にいたころから、女性に言い寄られることは数限りなくあったレムオンだが、自分から政略以外で女性を誘った事など無い。
相手はリムローズなのだから、今更戸惑う必要も照れる必要もないはずだったが、“冒険者”ではない彼女を前にして、レムオンはぎこちなく答える。
「どこに、行くのだ?」
「そうね〜、まずは千年樹のある広場に行きましょ。」
レムオンと腕をからませ手をつないだリムローズは、彼を見上げニコニコしながら歩き出す。

自分の過ちから壊してしまった街並みは、少しずつ復興を果たしている。アトレイアが立ち上げた復興団の成果が表れているようだ。そして、それだけに、今のロストールを見ることは、レムオンに罪の意識を植え付ける。
「なぁに、まさか、こんな美人とデートするのが嫌なの?」
「いや、そんなことはない。ただ…――。」
「あ!よかった、やってるわ。ね、レムオン、あそこのアイスを買って〜。美味しいのよ。」
リムローズは、レムオンを引っ張る様にして出店に向かう。
「おに〜さん、ストロベリーケーキトッピングね。」
「!…はっ、はい!……ど・どうぞ…。」
隣に立つレムオンを見て、あきらかにひきつった笑顔を見せた店員。それを気にする様子もなく、リムローズはスタスタ噴水の方へと進む。噴水横のベンチに座った彼女、レムオンも仕方なく横に並んで座る。
「少し食べる?」
「朝食をとったばかりだというのに。」
「別腹よ〜ん。おいしいんだから、ほらっ、あ〜ん♪」
「外で、そんな恥ずかしい事が出来るかっ!」
「クスクス。じゃ、家でやってあげる。」
上目づかいでレムオンを見ながら、リムローズは微笑んだ。それにしても…人々から忌み嫌われ、恐れられるダルケニスを横にひきつれて、こいつは平気なのか?と思ってしまう。彼女は、今や世界の光そのものだ。
たった数年で、名だたる冒険者として成長し、世界の行方を動かすことが出来るほどの力を身に付けた。レムオンから見れば、リムローズは初めて会った時から変わりは無い。気まぐれで我儘で、いつだって自分を振り回す…――。
「お前、いいのか?」
「何が?」
「俺とお前では、釣り合わんだろう?」
「なによ、私じゃ不満だっていうのかしら?」
「そうじゃない、むしろ逆だ。お前の傍に俺がいたのでは、人からどう思われるか、お前は考え…――。」
「あ〜、私、他人の意見なんかに流されないわよ?人に合わせるなんて嫌いだもの。私は、私のやりたいようにやるの。だ・か・らっ!」
リムローズは、立ち上がりレムオンに顔を近づけ言った。
「次は買い物に付き合ってよ、せっかくのデートなんだから。」
「……俺は、荷物持ちか?」
「あら、レディーファーストは、基本的な礼儀作法でしょ?」
「口が減らんな。では、次はどこに行くのだ?」


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