Rot

ビシャリ。
踏み込む部屋の、どこもが赤く染まっている……。
「ここも派手にやられた後だな」
「もう、流石に胸焼けしてきたよ。誰も生き残ってないんだもん。コレ、絶対誰かとブッキングしてるよ。誰かなぁ?……心当たりがいっぱいでわからないね」
「そんな物騒な知り合いのことなんか、どうだっていいだろ?早くこの前のパーティ出席者の名簿取ってこようぜ」
抱きしめたシュワルツが、腕の中で耳をピクピク動かしながら、周囲の状況を解析していた。
ここは、狂信的なまでの浄化派だった政治家の別邸で、メア達は、彼が開いたパーティに出席したのが誰か、情報を得るため潜入したのだが、どうやら先客が訪れていたらしい。
「シュワルツ、書斎側に反応は?」
「無い」
「じゃあさ、さっさと行って終わらせようよ。無駄に歩きまわると、せっかくの靴が汚れちゃうもの」

「良かった、書類関係は無事だね」
「一式揃ってるか?他にも良さそうなのがあったら持ってくぞ」
必要なのは、彼と親しい人物が誰か、それが分かる資料だ。彼と親しい=浄化の人間である確率が高い。軍関係者・政治家…高い地位につくものが、今何を考えているのか、どちら寄りの思想なのか。情報は、後々大きな利益に繋がる。
「あれあれ〜、こんな時にこんな場所に泥棒かい?」
「でた?」
メアは、ゆっくりと振り返る。
真紅の髪、左右色違いの髪……自分と同じような少年?が、人懐こい笑顔を浮かべ立っている。
「ちょっと、まるでお化けみたいな言い方しないでよ。……お化けになるのは、キミなんだからさ!」
刹那、二人の間合いが一気に縮まり、鋭い斬撃が空を切る。
身をかわしたメアに向かって間髪入れず投げつけられたナイフを、マントを翻し叩き落すと、引き抜いた銃を撃ちこんだ。
しかし少年の姿はそこになく、右側面に回りこんだ彼は、両手に銃を構え引き金を引く。
パンパンと、立て続けに乾いた音が響き、ころがり込むようにテラスに避難したメアは、牽制するように再び数発撃ち込んだ。
「あれ、思ったより速いんだ?じゃぁ、もう少し遊べるねぇ!」
「私、別に遊びたくないんだけど?!……シュワルツ、書類の内容保存した?」
「半分ならな。」
「じゃ、さよならしよう」
「残念、ここは通さないよ」
少年は、そう言って笑顔のまま素早い動きで踏み込むと、メアを斬りつける。転落防止の柵を掴みテラスの外へ躍り出たメアは、そのまま手を離す。
「バイバイ」
予想外の行動に、少年=ラーズグリーズは、目をパチパチと瞬かせる。
「ここ、3階だよ?まさか、飛び降りるなんて……面白い子だねぇ」


「痛っ〜い!あー、もうっ、最悪だよ。マント破れるし、服汚れるし、足撚るしっ!」
「……3階から飛び降りてその程度だったんだから、文句言うなよ」
「せめて2階だったら良かったのに、早く治してもらわなきゃ。それに、ブッキングした文句も言ってやるんだから、新しい服も作ってもらわなきゃね」
「その前に、仕事半分しか出来なかったろーが?」
「う……怒られるかな?」
「多分」
「あ!適当に誰かの名前書いちゃおっか?」
「殺されるぜ?」
「だよねぇ〜、はぁー、やな日だよ。」
溜息をつきむくれる彼女の膝の上で、シュワルツもまた溜息をついていた。


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